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2000年 地球人は
第2部 国を揺さぶる

「日本経済新聞 1面企画」


(8)新たな権力闘争

 産官独占に風穴

 争いは一本の電話から始まった。

 「米政府は木材貿易に関してアジア太平洋経済協力会議(APEC)でどんな提案をするのですか。提案の文書を見せてください」

 「そんな文書はありません。そもそも、あなたは何者ですか。木材貿易についてどういう意見の団体なのか教えなさい」

 電話をかけたのは、米環境保護団体、太平洋環境資源センターの部長、ペイジ・フィッシャーさん(28)。相手は、米国の通商交渉を統括する米通商代表部(USTR)の担当者だった。

 フィッシャーさんはその後、同じ担当者に何度も電話したが「話はかみ合わなかった」と振り返る。あるとき、企業を通じて提案書が手に入った。そう伝えると「文書は確かにある」と前言を撤回した。「でも、あなたには見せられない」

 「なぜ企業に渡している情報をNGO(非政府組織)には教えないのか。政策決定のプロセスは、もっと開かれるべきではないのか」。不満を募らせたフィッシャーさんは昨年7月、USTRの政策勧告委員会への参加を求め、米シアトル連邦地裁に提訴した。「政策づくりを政府と企業が独占する現状を変えよう」と説くフィッシャーさんを多くのNGOが支持した。

 11月、判決が下った。「USTRは木材貿易に関する政策勧告委にNGOの代表出席を認めよ」。提訴からわずか4カ月後のNGO勝利だった。

 NGOと政府の関係が、これまで以上に緊張をはらみつつある。「草の根の声」として在野から注文をつけていた時代から、NGOが政府の政策決定過程を直接監視し、影響力を及ぼそうとする時代。昨年12月シアトルで開かれた世界貿易機関(WTO)閣僚会議で一部活動家が無軌道ぶりをさらけ出すなど、NGOも玉石混交だが、国にとっては新たな「政敵」の出現といえる。

 王室の威を借り

 あの手この手を用い、NGOは遠く離れた外国政府にも働き掛ける。

 昨年11月、雪景色のストックホルム。児童保護に取り組む国際NGO、エクパットのスウェーデン支部長ヘリナ・カリエンさん(50)はドロットニングホルム宮殿の裏門をそっとくぐり抜けると、シルビア王妃(56)の執務室へ急いだ。5分後、王妃が笑顔で現れた。「ヘリナ!」「陛下」。カリエンさんはひざまずいて握手すると、さっそく用件を切り出した。

 「児童の性的虐待に関する閣僚会議を2001年にも日本で開きたいのです。日本を動かせば世界の児童保護運動に弾みがつきます。日本が開催国となるよう、お力添えをいただけないでしょうか」。カリエンさんは2時間にわたり熱弁を振るった。「わかりました。日本の皇室に手紙を書いてお願いしてみましょう」。王妃は快諾した。

 カリエンさんは前にも「王室効果」で日本政府を動かしたことがある。97年にエクパットが東京で開いた児童保護に関する国際会議。当初、日本政府は必ずしも積極的でなく、出席者も課長級にとどめる予定だった。カリエンさんは関心を高めようと、王妃に訪日を依頼。王妃の会議出席が決まったとたん、日本政府は出席者を次官級に引き上げると通知してきた。

 活動規制へ新法

 環境保護や人権擁護などグローバルな問題に取り組むNGOには、政府にも市場にも欠けている役割が期待されている。だが、一方で「選挙などを経ていないNGOがどこまで国民の代弁者として正当性を持つのか」という議論もある。

 エジプト議会は昨年5月、NGO規制法案を可決した。新法のもと、エジプトのNGOは海外からの資金援助の届け出、承認を義務づけられる。

 国内最大の人権NGO「エジプト人権機構」は、欧米からの年10万ドルの資金援助に依存している。事務局長のハフェズ・アブセーダ氏(34)は「新法は我々の活動封じ込めが目的だ。海外からの援助資金を報告すれば、政府は承認せず、活動停止に追い込まれる」と憤る。NGO関係者らは12月にカイロ市内で抗議集会を開いた。

 法案成立直後の昨年6月、当時の社会保険・社会問題相のメルバト・メハンナ・タラウィ氏(62)は記者会見で「NGOには権利と義務のバランスが必要だ」と強調した。国家が想定する社会秩序の枠を超えるNGOの活動は、規制するのが当然という論理だ。

 政策決定という国家の領域に踏み込もうとするNGOと、「その行き過ぎは国民の利益を損なう」として歯止めを主張する政府。両者の「権力闘争」は始まったばかりだ。

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