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2000年 地球人は
第2部 国を揺さぶる

「日本経済新聞 1面企画」


(1)主権在社

 ロンドンのシティーで、ある改革が動き始めた。市議会選挙の票数の大部分を住民ではなく会社に与えるという、主権在民ならぬ「主権在社」の試みだ。

 不動産額が票数

 1月27日夜7時。シティーの行政を担当する政策・資源委員長ジューディス・メイヒューさん(51)が公共施設バービカンセンターで、80人の住民を前に熱弁を振るっていた。

 「この街は英国に富をもたらす財産だが、国際金融都市として地球規模の競争にさらされている。世界からもっと企業を呼び込みたい」。彼女はそう言って改革案を説明し始めた。

 票数は企業がシティーに持つ不動産の課税評価額で決める。100万ポンドまでは2万ポンドごとに1票で、外資系も差はない。最も票が多いのは英大手金融グループのナットウエストでおよそ150票。全体では9割もの票が企業に割り振られるという。住民の一票はそれだけ軽くなる。

 実際に投票するのは企業が票数に合わせて従業員から選ぶ投票人だが、それでも企業は歓迎一色。バークレイズ銀行は「住民と手を携え街の発展に尽くしたい」とのコメントを出した。

 ニュージーランドから移住してきたメイヒューさんがシティーの行政トップに就任したのは1997年。女性としても外国系としても初めてだった。慣習にこだわらない地球人に、19世紀以来というシティーの選挙制度は時代遅れに見えた。

 「昼は25万人がこの街の企業で働いているのに、夜間人口は7000人だけ。真に民主的な政治をするには、だれを相手にしたらいいのか」。個人のほか企業にも主権を与え、その負託を受けて街を運営する。目指すべき方向は決まった。

 企業名に改名

 米オレゴン州の小さな町ハーフウエーに突然の訪問者がやって来たのは、99年12月のことだった。

 フィラデルフィアの電子商取引企業ハーフドットコムのマーケティング担当部長マーク・ヒューズ氏(34)。彼のもってきた提案は町を仰天させた。「市の名前を当社と同じ名前に変えませんか。町は初のドットコムシティーとして有名になるし、当社の知名度もあがります」

 改名すれば見返りとして町の学校にパソコンを寄贈し、市民のホームページも無料で作るという。「1年たったら、当社のストックオプション(自社株購入権)を市が利用できるようにすることも考えましょう」

 ディック・クラウ市長(64)は悩んだ。開拓者の町として120年の歴史を持つ「ハーフウエー」への愛着は人一倍強いが、政治家として町の将来には強い不安を感じる。人口はわずか345人に減り、最近、2つしかないガソリンスタンドの1つがつぶれた。市の財政も苦しい。心は決まった。

 145人が集まった2000年1月18日の住民集会。「市名を変えてお金をもらうなんて魂を売り渡すのか」。反対意見も出るなか、クラウ氏は議論を引き取った。「伝統の開拓者精神で、この町をネットビジネスのフロンティアにしよう」

 住民の投票では70%が改名に賛成、翌19日、「ハーフドットコム市」が誕生した。

 「企業に顔を向けた政治」へと大胆に舵(かじ)を切り始めた地方自治体。それは国の政治にも波紋を広げている。

 修正案出し抗戦

 再びシティー。企業に投票権を与えるために成立が必要な選挙制度改革法「シティー・オブ・ロンドン法案」に対し、英下院では反対論が沸騰していた。

 「成人に1人1票を与え、その権利に軽重をつけないという民主主義の基本原則を踏みにじるものだ」「政治目的のために票を売る腐敗した法案だ」

 ロンドン選出の労働党議員ジョン・マクドネル氏(48)は修正案を大量に出して法案の採択を遅らせる戦術を展開する。「住民と企業は、求める政策が違う。企業が主導権をとれば、教育など生活に直結する問題がなおざりにされかねない」

 政府は法案を支持する立場。昨秋の審議でキース・ヒル地域問題担当次官(56)は「シティーの統治が近代化される」と発言した。そこには、企業が軽々と国境を越えるいま、国としても企業にいい顔をせざるを得ないとの本音がのぞく。

 「主権はだれのものか」という重い問いを投げかけたシティー選挙法案。労働党の一部と保守党の賛成、政府の支持で、今夏までに成立する公算は小さくない。

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