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2000年 地球人は
第2部 国を揺さぶる

「日本経済新聞 1面企画」


(9)義勇兵の”罪”

 米国の司法当局に“白旗”をあげさせた男性がニューヨークのレストランで働いている。ユーゴスラビア・コソボ自治州出身のアルバニア系米国人、ミロ・ブーチャ氏(29)である。

  • 白黒つけられず

     1999年4月半ば、彼はセルビア軍の侵攻に抵抗するコソボ解放軍の義勇兵に志願して、仲間と一緒に“故国”へ向かった。耳のすぐ横を弾丸がかすめてゆく。はじめて持った銃を撃ちまくる。ひたすら指揮官の命令通りに動いた。「もちろんこわかったけど、セルビア兵への憎しみの方が強かった」

     帰還後、米国のアルバニア系社会で一躍英雄になる。が、米司法省は渋い顔をしているとも聞いた。義勇軍への参加が「1794年中立法」に違反するかもしれないという話だった。

     中立法は米国人が外国の軍隊に参加することを禁じている。他国の戦争に、独立したての米国が国として巻き込まれるのを防ぐための法律である。

     外国の軍に加わったということなら、ブーチャ氏の行為は確かに中立法に触れる。でも、「人道」が国の主権を超える普遍的な価値だとされる時代に、そのために戦った人を国内法で裁いていいのか。米政府だって、人道を理由に北大西洋条約機構(NATO)のコソボ空爆を正当化したのではなかったか。そんな議論もあるなか、簡単には白黒をつけられなかった。

     結局、米政府は司法判断を停止する。司法省報道官は米紙に「彼らの行為を禁止する法律はあるが、200年前のもので判例もない。合法なのか非合法なのか、結論は出せない」と語った。ブーチャ氏は、いまも訴追されていない。

     「あなたのホームページは当社の商標を侵害しています。7日以内に回答がなければ米国の裁判所に提訴します」。99年11月、米大手パソコン会社デルコンピュータから届いた電子メールに、東京に住む学生、原田拓氏(25)は仰天した。

  • 民間仲裁が台頭

     ホームページといっても漫画の同好会のために開いた個人的なもの。だがアドレスに「dell」という文字を含むため、商標を無断で使ったと思われたらしい。彼はインターネットの怖さを痛感した。「内輪だけのホームページでも世界に見られている。いつ、どこから文句をつけられるかわからない」

     商標侵害の意図はなかったというので半月後に和解したが、「もし裁判になっていたら」と考えるとぞっとする。弁護士に聞くと、ネットでは商標侵害の行為があった場所を特定しにくい。商標権を広く認める米国と、限定的にしか認めない日本の法律のどちらを適用するのか。裁判が入り口で立ち往生して長引くのは確実だった。

     国境のないネット上のトラブルを裁判所に持ち込んだら時間ばかりかかって、原告、被告のどちら側でもリスクが大きい。だから、米大手ネット競売会社イーベイは利用者との契約に「紛争が起きたら米国仲裁協会に解決をゆだねる」との項目を必ず盛り込む。

     民間組織の仲裁協会は自国の法律だけに固執せず、トラブルを裁く。「紛争の解決が遅れればビジネスでは致命傷になる。仲裁は短期間で解決してくれる」。知的所有権担当のジェイ・モナハン氏(40)は話す。

  • 法の統一にも壁

     21世紀の地球社会では、いまの司法が裁ける領域は狭くなっていく。国を超えた新しい司法をつくろうという試みも、壁にぶつかっている。

     99年10月、各国の民法や商法を統一するために開いたハーグ国際私法会議の特別委員会で、激しい議論が展開された。

     口火を切ったのは米政府代表のジェフリー・コーバー氏(41)。「欧州の提案では、米国の消費者が外国企業ともめても、その企業の支店や事務所が米国内にないと海外の裁判所に訴えるしかない。被告企業の店がなくても、継続的な営業活動をしていれば、国内で外国企業を訴えられるようにすべきだ」

     欧州の代表が反発した。「『継続的』という、あいまいな基準では受け入れられない」

     電子商取引の普及も問題を複雑にした。国内に店がない外国企業からモノを買うという事態が、まさに当たり前になったからだ。欧州からみると、ネットを口実に、これまでにもまして自国企業が米国の裁判所に訴えられることになりかねない。結局、10月会合の報告は両論併記にするしかなかった。

     国が新しい「裁きのかたち」をつくれないでいるうちに、現実だけが前に進む。

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