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2000年 地球人は
第2部 国を揺さぶる

「日本経済新聞 1面企画」


(3)灯台守はだれ

 それは米バージニア州北部の静かな森にあった。インターネットの「世界住民基本台帳」。地球上のすべてのホームページの住所と名前、いわゆるドメインネームのデータベースだ。

 900万件を管理

 住民台帳といっても、管理しているのは役所ではない。ネットワーク・ソリューションズ(NSI)。民間会社である。台帳をつくった「ミスター・ドメインネーム」、ドナルド・テラージ氏(55)が説明してくれた。「登録済みのドメインネームは約900万。しかも日々、更新される。その管理は技術力が必要。役所じゃ無理だ」

 説明は続いた。「ホームページへの『住所』の割り振りも、基本のところは民間がやっている」。たとえばネームの最後につく「ドットjp(日本)」などの国名コード。ネームの重複を防ぐため、どの国でもひとつの組織か個人がその所有権を持ち、希望者は許可をとらないと使えない。この所有権を世界のだれにどう割り振るのかを決めているのはICANN(インターネットネーム・ナンバー登録協会)という国際民間団体。「要するに、ネットのインフラは民間が支えているのさ」

 テラージ氏は最近、台帳を見ていてあることに気づいた。「ドットnu」で終わるネームがすごい勢いで増えているのだ。

 「ドットnu」は南太平洋に浮かぶニュージーランド自治領ニウエの国名コード。調べてみると、コードの所有権は米マサチューセッツ州の企業が持っていた。そしてコードを使っているのは大半がスウェーデン人。ニウエがスウェーデン語で「新しい」を意味するからだ。

 「国名コードといっても識別のための便宜的なもの。外国人が所有権を持つ例はほかにもあるし、それをさらに別の国の人が使ってもいい。政府の連中はカリカリするだろうけど」。テラージ氏はそういいながら、昨年5月のICANNベルリン会合を思い出していた。

 新しい公共財に

 欧州などの政府には「外国人が国名コードをおさえているのは主権侵害」との思いが強い。フランスのように、コードの所有権を政府と関係の深い非営利団体が持ち、外国人の利用を制限する国もある。「ネットに主権を持ち込んだら、国を越えた利用が制限される」という民間とは相いれず、とうとう対決したのがベルリン会合だった。

 民間側は世界の学者や企業担当者らICANNメンバー。政府側はICANNにものをいうために約40カ国でつくるGAC(政府諮問委員会)のポール・トゥーミー議長(38=オーストラリア政府代表)である。

 「政府に権限を与えたら何をするかわからない」

 「国名コードの管理は政府に任せるべきだ。わかってくれないのなら、ジュネーブに持ち込むしかない。(世界貿易機関=WTOなど)しかるべき機関にルールをつくってもらおう」

 「そんなことをしたら、ネットは死んでしまう」

 だれも排除されないし、だれかと競争しなくてもその恩恵を受けられる公共財。例えば沖の船すべてに等しく光を届ける灯台だ。インターネットもいまや地球社会の重要な「灯台」となったが、灯台守にはだれがなるのか、まだ見えない。

 ヒトのすべての遺伝情報が刷り込まれたゲノム(遺伝子の総体)。この「人体の設計図」を解読し、病気治療などに役立てようという国際プロジェクトで“事件”が起きたのは、1年半前のことだった。

 国際計画に先行

 日米英など主要国政府は遺伝情報の公共データベースをつくる「国際ヒトゲノム計画」を共同で進めてきた。ところが計画の総本山、米国立衛生研究所(NIH)を飛び出したクレイグ・ベンター博士(53)が1998年5月、セレーラ・ジェノミクス社の設立を発表して独自に遺伝情報の解読に着手。1万件の特許をまたたく間に出願し、製薬会社に年約500万ドルで使用権を与え始めたのである。

 NIHの計画責任者、フランシス・コリンズ博士(49)がベンター博士と交渉する。「ゲノムは世界が共有すべき公共財。政府とデータベースを一体化しよう」「ゲノムはあくまでも商品。一体化するなら年数千ドルのデータ使用料を払ってほしい」。議論は平行線のまま終わった。

 政府がヒトゲノム計画で解読を終えたのは30億の遺伝情報のうち半分程度。一方のセレーラ社は今年1月、「9割の解読を完了した」と宣言した。

 公共財であることに異論はないが、その管理をめぐり官民が主導権を争うネット。そもそも公共財かどうかが問われたゲノム。「公とは何か」の哲学に、グローバル化と急速な技術革新が、挑戦状をつきつけた。

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