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2000年 地球人は
第1部 翔ける人々

「日本経済新聞 1面企画」


(11)はしご登るNGO

 「経営学修士(MBA)取得者で開発援助プログラムに8年以上参加した経験者を求む」

 1999年11月下旬、発展途上国の支援を手がける非政府組織(NGO)「ケアUSA」がこんな内容の求人案内をホームページに掲載した。報酬は年間8万ドル以上。大企業の管理職の年収に匹敵する額だ。

第3のエリート

 プリンストン、ジョージタウン――。アトランタのケア本部には職を求めて米国の有名大学の卒業生が続々やってくる。「こんなに多くの後輩が後に続くとは」。ケビン・ヘンリー代表補佐(43)は驚きを隠さない。

 81年、プリンストン大大学院を卒業したヘンリー氏は、米外交官試験の最終面接に臨んでいた。「自分の信条に反する政策でも遂行できますか」「できません」。最初の質疑応答で外交官への道は絶たれた。というより、自分で絶った。「米国の国益より、貧困で苦しむ途上国のために働きたかった」

 いまや、NGOの職員は政府や企業の幹部に続く「第三のエリート」。人道や環境という、国を超えた新しい価値が地球人たちを引きつけ、新しいエリート層をつくり出した。

政権のブレーン

 NGOから政府高官に転身する人物も出始めた。元米国務次官補代理のレイフ・ポメランス氏(53)。政府と民間企業を行ったり来たりしながら高い地位に昇っていく、いわゆる「回転ドア」のNGO版である。

 「垂直のはしごをまっすぐにのぼってきた」という彼が、キャリアの最初のはしごをのぼったのは、1975年に米国とカナダの環境保護NGOの連合体「地球の友」の代表に就任したときである。その後、ワシントンで最も影響力を持つNGO「ワールド・リソース・インスティチュート(WRI)」の幹部として環境政策の提言に携わり、ゴア副大統領(当時は上院議員)のブレーンにもなる。

 93年になると、誕生したばかりのクリントン新政権で環境保護局のナンバー3、次官補にポメランス氏をあてる人事案が浮上する。環境保護派としての彼の発言力を知る自動車業界は、排ガス規制の強化を恐れ、戦慄(せんりつ)した。

 「この人事はわれわれへの宣戦布告と考える」。自動車業界を支持基盤に持つ下院議員らから圧力がかかり、結局、ホワイトハウスはこの人事案を引っ込める。代わりにポメランス氏にもちかけたのが国務次官補代理。「環境保護という目的は同じだが、外から政府に働きかけるより、その中に入って直接政策を立案したい」。そう思っていた彼はこの誘いに乗った。

 ポメランス氏は6年勤めた国務省を辞め、2000年1月にジョージタウン大学の教授に就任した。だが、はしごをのぼるのをやめたわけではない。この教授職はホワイトハウスや議会で次を目指す人の待機ポストともいわれる。彼は再び机の電話がなるのを待っている。

力の制御に課題

 民間企業への転身組も増えている。米シアトルに本社を置く大手コーヒー会社、スターバックス・インターナショナルの人事担当副社長、リー・ゲルブさん(44)は、その1人だ。

 途上国を支援するNGOにいた彼女に誘いがかかったのは1997年だった。「あなたのような人材を求めていた」。スターバックスの創業者ハワード・シュルツ氏直々の引きである。

 ゲルブさんは異なる言語、価値観を持つ人々を使いながら、ハイチ、バングラデシュ、スリランカなど貧困国の現場でいくつもの支援プロジェクトを仕上げてきた。「世界でコーヒー店を展開するわが社で、その経験を生かしてほしい」。シュルツ氏のことばに心を動かされる。「自分の能力がこんなに高く評価されているなんて」。決断するのに時間はいらなかった。

 存在感を増す一方のNGOエリート。世界は、彼らが米シアトルで暴走する姿もみた。

 1999年12月初旬、世界貿易機関(WTO)閣僚会議で、NGOの活動家たちは「反自由貿易」の旗を掲げ、シアトル市内を騒乱に陥れる。「自分の力の大きさと、その力の使いかたを、彼らはまだまだわかっていない」。ワシントンから見ていたポメランス氏は、若いパワーであるがゆえのNGOの限界も感じ取っていた。

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