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2000年 地球人は
第1部 翔ける人々

「日本経済新聞 1面企画」


(5)「才能株」を買って

 自分の才能を株式市場で売り出した女性がロンドンにいる。

 PR会社で働きながら女優を目指すキャロライン・イレーナさん(28)。製品化途上の技術をタネにベンチャー企業が株式上場するように、まだ花が開く前の自分の才能だけを“資産”に、会社を1人でつくり株式を発行した。「ハイテク株」ならぬ「才能株」である。

 可能性が資産に

 1999年12月21日、ロンドンのホテルの一室で、株式会社「キャロライン・イレーナ」の株主総会が開かれた。「PRではウォルト・ディズニーなどの仕事も請け負い、充実した年でした。演劇界での人脈も広げています」。涼やかな笑みを浮かべながら会社の業務成果を報告するイレーナさん。その頭をふと、絶望の淵(ふち)にいた5年前のことがよぎった。

 ロンドンの名門演劇学校にせっかく合格したのに、年間1万ポンドの授業料がどうしても工面できない。有名人に何百通も手紙を書いて援助を頼んだりもしたがダメ。あきらめかけたとき、アイデアがひらめいた。

 「株を発行して私の才能に投資してもらったら……」。才能は目に見えないから株の裏づけとしては極めて不安定。だが、彼女には女優としての可能性を示す演劇学校の合格証がある。「投資家もきっと、私の才能株が将来十分な利回りを期待できると思ってくれるわ」

 株主の厳しい目にさらされる立場に自らを追い込み、女優の才能に磨きをかける。そういうイレーナさんの姿勢も投資家を引きつけた。ミュージカル作曲家のアンドリュー・ロイド・ウェバー氏やニュージーランドの投資家らが合わせて百株を引き受け、彼女は1万ポンドを調達。学校を無事卒業し、1997年には舞台デビューも果たした。

 10%の配当目標

 もっとも、才能株の配当はまだゼロ。いまのところ女優業からの収入がほとんどないので、イレーナ社の1999年度決算では、売り上げにとりあえずPR会社からの給与3万5000ポンドを計上した。それも大半は演技を勉強するための資金に回したから、利益も出なかった。

 「まだ無理をしなくてもいいよ」。優しい株主が声をかけてくれる。だが、イレーナさんはあと2年、30歳になるまでになんとしても10%の配当を実現するつもりだ。「そのためには、世界のどこの舞台だって出るわ」。それが株主への責任だと思っている。

 株主や消費者、取引先の目が光る「市場」に飛び込んで自分を試し、鍛える。地球上のあちこちでそんな人が出てきた。

 米テキサス州のパソコン大手デルコンピュータに「創業者のマイケル・デル会長以上に有名」といわれる人物がいた。ダドリー・アトキンス氏(50)。世界に流れるデルのホームページの人気コーナー「ダドリーに聞け」の顔である。

 「ダドリー、パソコンがうまく動かないんだ」「まず電源が入っているか確認してください」――。ユーザーから届く問い合わせメールにコンピューターが答えていく。画面のなかでは、長い髪を後ろで束ねたアトキンス氏がほほえんでいた。

 彼は高校卒業後いくつかの会社に勤め、デルに転職した。最初は電話技師だったが、間もなく「大きな挑戦」に踏み出す。パソコンやインターネットでだれにも負けない技術を手にすることだった。いまや、社内のパソコンの“生き字引”。ホームページの名前も「ダドリーに聞け」であっさり決まった。

 「あなたはダドリーね」。アトキンス氏は最近、街で見知らぬ人に声をかけられた。「会社の外に自分の価値を認めてくれる人がいっぱいいる」。彼は「挑戦」を続けようと思った。

 外から人事評価

 パリ郊外の医療機器メーカーGEメディカル・システムズ・ヨーロッパ。1999年秋、製品説明書を各国語でつくる仕事をしているベレン・プリエトさん(35)が、賭(か)けに出た。社員が社外の取引先などを自分で選び人事評価をしてもらう新制度で、顔も知らない米国、日本、イスラエルの取引先を評価者に選んだのだ。

 同僚が親しい取引先に評価を頼むなかでの選択だったが、結果はいずれもほぼ最高点。ほおが思わずゆるんだ。「世界で仕事をしていく自信がついたわ」

 「市場の目」のなかでモラルを維持し、業績を伸ばす。本来は「企業統治」と呼ばれる企業経営の考え方だ。それが、地球人たちによって、個人の労働規範になり始めた。

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