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2000年 地球人は
第1部 翔ける人々

「日本経済新聞 1面企画」


(13)起業ボーイズ

 願書の束が毎日届く。仕分けも済まないうちにまた、郵便配達人が新たな束を運んでくる。締め切りは2000年元日付の消印だが、海外からもたくさん届くので手元に全部そろうのは15日前後になる。最終的に、3000通弱だった前の年より5割近くは増えそうだ。

ランキング志向

 米国のカリフォルニア工科大学(カルテック)の入試事務局。リーダーのシャーリーン・リーボウさんは願書の処理に忙殺されていた。「こんなのは初めてよ」。専任スタッフを2人増やして5人にしたのに追いつかず、「クリスマスや年末年始も出ずっぱり」。願書を保管しておく場所もなくなってきた。

 入学希望者が殺到したきっかけは、米週刊誌「USニュース・アンド・ワールドリポート」が1999年8月下旬に発表した大学ランキング。ハーバードなど東部の名門大学を抑えて初めてのトップに立った。筆記試験や面接のノウハウを教えるコンサルタントに1時間200ドルも払い、進学実績の高い高校に近い家を探す。そんな高ランキング志向の受験生たちが、こぞってカルテックを目指した。

 「この大学の何がいいかって? 技術水準が高いことと起業しやすい環境があることかな。東部の大学のようにビジネススクールはないけど、自分で事業を起こし成功した卒業生がたくさんいて、刺激を受けるんだ」。シンガポール出身で電気工学専攻の在学生プニート・ニュワスカー氏(21)は、受験人気の背景をそう分析してみせた。

 彼自身、大学の起業家クラブのリーダーをつとめ、卒業後に事業を起こす計画だ。周囲から「それより学者になれ」と言われるが、インテルのゴードン・ムーア名誉会長(71)やコンパック・コンピューターのベン・ローゼン会長(66)ら、OB起業家たちをみると胸が騒ぐ。

新しい「権威」

 ノーベル賞受賞者を27人も出した学術の殿堂で、ハイテク起業家の揺りかごとしても名を上げるカルテック。「起業 株式公開」を人生の成功とみる米国の株式文化がこの大学の格付けを引き上げ、教育の新しい「権威」に押し上げた。そして、事業家を目指す世界の「起業ボーイズ」を引きつけている。

 フランクフルトから電車で南へ約45分。そこにドイツ有数の人気大学ダルムシュタット工科大学があった。

 ヨハンディートリヒ・ベルナー学長(45)が、ひとつの調査結果を引っ張り出してきた。「学生に大学を選んだ理由を聞いたら、ウチの学生は60%が『評判がいいから』を選んだ。ほかは平均して18%だ」。世間での圧倒的な評価の高さが人気につながったという分析だ。

 高い評価の背景にあるのは、ここでも起業環境のよさだった。ベルナー氏自身、99年5月に学生起業家らを支援する会社を立ち上げた。「そういう努力が評価されたのだろう。われわれは間違っていなかった」

 入試がなく、みんなが希望大学に入れるドイツでは、入学者の増減が人気のバロメーター。95年に約2600人だったダルムシュタットの入学者は約3000人に急増した。

米会計士夢見て

 若者が殺到するのはランキング大学に限らない。

 99年11月初め。米ロサンゼルス近郊の町ポモナに韓国や台湾などの若者が殺到した。世界から10万人以上が受験する米国公認会計士資格の試験会場のひとつだ。そこにソウル出身の権赫正氏(26)の姿もあった。

 日本の産能大学に留学している権氏がこの資格を目指したきっかけは国際会計基準の見直しだった。新聞を読むと新基準は米国基準に近いものになりそうだ。「米会計士資格の取得者を優遇」という求人広告も目にする。経済危機から回復し始めたとはいえ、韓国の就職事情も依然厳しい。権氏は意を決した。

 11月の初挑戦は失敗した権氏。「この資格はきっと自分の活動の場を世界に広げるパスポートになる」。再挑戦に向け、準備に励む毎日だ。

 地球人の個人としての資質が厳しく問われる知識社会。若者たちは広く世界に通じる「権威」にすがろうと、いたるところで受験競争を過熱させている。

 「でも」と、カルテックの学生ニュワスカー氏は言った。「カルテックがいつも1番になるなんて、ありえないとは思う」。変化の速いグローバル社会での権威のはかなさを、自らに言い聞かせているようだった。

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