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2000年 地球人は
第1部 翔ける人々

「日本経済新聞 1面企画」


(4)「商費者」主権

 出勤前の朝7時半、米サンフランシスコに住むリンゼー・ウォルシュさん(29)は、パジャマ姿のまま友人や会社の同僚25人に一斉に電子メールを打ち込んだ。「あと5人集まれば向こうの提示価格は300ドルまで下がる。これほど安く買える機会はないわよ」

 量販店も顔負け

 この日の標的は人気商品の携帯情報端末(定価499ドル)だった。刻々と増える購入者とそれに伴い下落する価格。24時間後、彼女は全米から50人の「同志」をかき集め、270ドルの最安値を引き出した。パソコンに映し出された戦果に、笑みが広がる。

 「サイバー買い付け団」――。個人がチームを組んで大口顧客のように振る舞い、大企業に匹敵する価格交渉力を手にする。ウォルシュさんはネットを使った共同購買会社のシステムを使い、量販店顔負けの取引に成功した。「自分は一体、消費者なのか商売人なのか。時々分からなくなるわ」

 消費者と商売人の両方の顔を持つ、いわば「商費者」たち。21世紀を目前に、新しい人種が出現した。彼らは地球規模のインターネットを武器に、作り手と使う側の間にあった伝統的な壁を突き崩す。

 1999年12月下旬、サンフランシスコ港を望む倉庫街の事務所。ジャスティン・フランケル氏(21)は190センチの長身を折り曲げパソコンに向かっていた。

 彼は世界で2000万人近い利用者を持つ音楽再生ソフト「ウィンアンプ」の原作者。ネット経由で流す音楽データをCD並みの高音質で楽しめる。音楽業界を揺るがす革新技術だ。

 その発明者も元は音楽の一消費者に過ぎなかった。アリゾナの田舎で育ったフランケル氏は大の音楽好き。大学に進学したが半年でやめ、音楽再生ソフトの無償配信を始めた。のちに興した会社はアメリカ・オンラインの子会社として、今も原則無料でソフトを提供している。

 「僕はプログラマーであると同時に音楽マニア。仲間が楽しんでくれるのが何よりうれしい」。作り手と利用者の両方の立場だからこそ、いいソフトが書けると信じている。

 会員同士で売買

 インターネット上で「コミュニティー」を運営する米シックスディグリーズ社の社長、アンドリュー・ワインリッチ氏(31)。仲間とニューヨークのビルから「伝染性電子メール」を発信して3年が過ぎた。会員は1999年末に世界165カ国、300万人を突破した。

 伝染性といってもウイルスのような違法行為ではない。メール受信者が会員になるたび知人6人を紹介してもらい、地球規模でネットワークを築く。会員になると、ほかの会員と情報交換できるだけでなく、技能やサービスを互いに売買できる。

 「週末に世界のダンスを教えます」(スロベニアの男性)「刺しゅう歴35年。結婚式や誕生祝いの編み物承ります」(米国の女性)――。会員の多くは、時には売り手、時には買い手になる「商費者」だ。「中心は16歳から24歳。自らが情報、人脈の発信源になって何かをしたい世代なのです」

 米国では1977年生まれ以降の人口が7800万人にのぼる。この世代は人類史上初めてネットで結ばれた環境で育ち、上の世代と異なる国家観や市場観を持つ。世界の若者と共鳴し、「商費者」の先鋭隊となっているのがこの世代だ。

 市場統制に風穴

 もちろん、急激な変化には抵抗も根強く存在する。

 「例の『批判張り付け技術』はいい加減にやめてくれないか」。米シリコンバレー、「サード・ボイス」社の共同創業者でシンガポール出身の起業家、エン・シオン・タン氏(36)にはひっきりなしに様々な圧力がかかる。企業をはじめとする「権威筋」からだ。

 140カ国の「普通の人々」が企業などのホームページに意見を張り付け、専用ソフトで読めるサービスを事業化した。消費者による製品批評から大学教授への反論、果ては大統領候補のスキャンダルまで、あらゆる草の根の「声」が飛び出す。

 企業や政府が圧倒的な情報量と市場統制力を独占してきた工業化社会。「商費者」が主権を握る時代になれば、旧来の秩序は崩壊する。タン氏は言う。「グローバル時代の消費者はモノを言う術を知ってしまった。だれにも時計の針を逆に回すことはできない」

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