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2000年 地球人は
第1部 翔ける人々

「日本経済新聞 1面企画」


(12)21世紀のギルド

 米フィラデルフィア。町の中心部にあるビルの一室を訪れると、中年の男たちのにぎやかな会話が聞こえてきた。

 「あなたは自己嫌悪に陥ってる。もっと自信を持って面接に臨めば絶対仕事は見つかるよ」

 「商工会議所のパーティーは職探しに役立つらしい。行ってみないか」

 求職者が運営

 ここは40歳以上のホワイトカラーの職探しを手伝う非営利組織「40(フォーティー)プラス」。ただし専属の職員は1人だけ。組織の運営から意思決定まですべて求職者自身が行う「失業ミドルによる失業ミドルのためのボランティア組織」だ。

 メンバーの1人、チャーリー・ブラッドフォード氏(58)は2カ月前に職を失った。勤めていた米大手銀行が「グローバル競争で勝ち抜くこと」を理由に大規模な事業再編に踏み切ったからだ。家族を支えるためにまだまだ働かなければならない。でも糸口が見つからない。悩んでいた時に友人に教えられたのが40プラスだった。

 メンバーは無給で来てくれる職業カウンセラーから面接指導や能力向上のアドバイスが受けられる。この会を経て仕事をみつけた人たちとのネットワークも求職活動の味方になる。

 「でも、ここにいる理由はそれだけではない」とブラッドフォード氏。「つらい経験をした中高年が励まし合い、求職のヒントを与え合う。それがどんなに心の支えになるか」。そう言いながら、この日入った新メンバーの肩をポンとたたいた。

 40プラスは1990年代に急成長し、今では米国各地、カナダに支部を持つ。

 医療・年金で不利

 「企業の正社員でない人たちの生活や権利を守るにはどうすればよいのか。米会計検査院に調査するよう命じました」

 ニューヨークに本部を置く非営利団体「ワーキング・トゥデー」の代表、サラ・ホロウィッツさん(37)のもとに99年11月末、一通の手紙が届いた。差出人はトリチェリ上院議員。“非・正社員族”の権利向上をめざして95年末にこの団体を設立した彼女がワシントンを走り回り、働きかけてきた議員の1人だ。

 ホロウィッツさんが組織設立を思い立ったのは、労働組合相手の若手弁護士として仕事をしていた時。労使関係を見ているうちに、人々の働き方が大きく変わりつつあることに気づいた。契約ベースで仕事を請け負う人や人材派遣職員など、職場を次々に変えながら働く人の数が猛スピードで増えている。それなのに企業や労組の考え方も、法律も全く昔のまま。彼らの権利は全く顧みられていない。「そう思ったらいてもたってもいられなくなった」と笑う。

 会員数は現在10万人弱で職種はソフトウエアのプログラマー、アニメーターなど様々。政治家への働きかけだけでなく、様々なサービスを提供しているのも会員にとっては魅力だ。法律相談を安く受けられたり、医療保険で団体割引も使える。

 「非・正社員族にとって一番の問題は年金・医療で圧倒的に不利な扱いを受けていること。制度を全面的に変えたい。同じ問題は今後世界中に起きるはずだ」。ホロウィッツさんは小柄な体からはちきれんばかりの意欲をみなぎらせながら語る。

 会員は世界中に

 「ビッグブルー卒業者インターナショナル」。テキサス州ダラスに住むリンダ・アンダーソンさん(49)は93年、こんな名前の組織をつくった。IBM退職者が職を紹介し合ったり、生活面の相談をし合うネット上の互助組織だ。ビッグブルーはIBMの愛称。同社は当時、大量の人員削減を進めていた。「会社を追われ、自信喪失に陥った人も多かった。輝いていた人たちが落ち込んでいるのを見るのがつらく、自信や相互信頼の回復に役立てばと思って始めた」。その試みに共感が集まり、会員は米国内だけでなく、香港、ロンドンなど世界に広がる。

 英貿易産業省は米国を中心にぼっ興するこうした組織を参考に99年夏、「ギルドの時代が再来する」というリポートをまとめた。中世欧州の職人による相互扶助組織ギルド。企業の傘を離れ、個人の技能で生きざるを得なくなった人々が、同じ職種や地域で団結する21世紀のギルドを世界中でつくるだろうと予測する。

 企業による雇用維持が難しくなったグローバル競争の時代。仕事が頻繁に変わる地球人の間で、互助の精神を基本に新しい「団結権」を模索する動きが始まった。

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