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2000年 地球人は
第1部 翔ける人々

「日本経済新聞 1面企画」


(14)突然の隣人

 議場に入ると、威勢のいいスペイン語が次々と耳に飛び込んできた。れっきとした米国の町、それも市議会でのやり取りだ。「ゴミの回収をもっと増やせ」「保安官の巡回も足りないぞ」。白熱した議論に、傍聴席の住民が身を乗り出す。

  • 議会はスペイン語

     メキシコ国境沿いのテキサス州エル・セニソ。人口約8000人のうち9割がメキシコ系という典型的な移民の町だ。この小さな市が「米国で初めてスペイン語を公用語にした」と報道され、大反響を巻き起こしている。

     「英語を話さないなら国を出ていけ」。抗議の手紙は百通を超えた。白人至上主義を唱える組織は脅迫状を送りつけてきた。大統領選に出馬したブッシュ・テキサス州知事の報道官も「米国では政府の仕事は英語ですべきだ」と懸念を表明した。

     だが、渦中の人、ラファエル・ロドリゲス市長(45)は動じない。20年前にメキシコから来た市長自身、英語はあまり話せない。「住民の望みを実現したまで。外部の声は関係ない」

     以前は議会の傍聴席は閑散としていた。「住民を呼び込むには皆が分かるスペイン語にするしかない」。狙いは当たり、今では傍聴人が部屋を埋め尽くす。

     実はエル・セニソはスペイン語を「公用語」と定めたわけではない。新しく制定した条例で、1999年8月から市議会での使用言語をスペイン語に変えただけ。学校の授業や道路標識は英語のままだ。

     にもかかわらず起こった強烈な反応。それは90年代以降、一気に移民が流入したこの町のように、瞬時に大量の移民が独自のコミュニティーを築く時代を迎え、多民族社会の米国でさえ戸惑いが広がっていることを物語る。

  • カナダに「香港」

     カナダ・バンクーバーの南、新興住宅街リッチモンドの中心部を歩くと、香港に迷い込んだかのような錯覚に襲われる。

     道行く人は、たいていが中国系。聞こえる言葉は広東語だ。「髪廊」(理髪店)、「薬行」(薬局)といった看板が立ち並ぶ。かつての閑静な白人住宅地の面影を探すのは難しい。

     90年代に移民が大挙して押し寄せ、あっという間に町の様相を変えた。現在、16万人の人口のうち半数が中国系。そのほとんどが香港からの移民だ。

     ダニー・ソー氏(50)は香港が中国に返還された97年に移住してきた。年金制度などが充実しており「老後を考えるとカナダは魅力的」。香港では中流でも、物価の安いリッチモンドでは裕福な部類に入る。英語はうまく話せないが、ここなら広東語で事足りる。

     そんな移民に旧来の住民からは反発とも、やっかみともつかぬ声が聞かれる。地元紙を発行するジョージ・レイルトン氏(58)は「おカネを持っているのはいいが、高校生の子供にBMWを買い与えるのはどうか。それに、我々の社会と融和しようとしない」と厳しい。

     「中国語で授業をする公立小学校を開設してほしい」。移民社会は要請するが、教育委員会は動かない。会社員のマーティー・シルズ氏(34)は「中国語の学校を設立するなら税金は払いたくない。移民は英語を勉強すればいい」と言い切る。

  • 相互理解に腐心

     米シカゴ近郊のネイパービル。99年5月、市内の目抜き通りに地元の中高校生300人が集まった。イタリア系、中国系など、出身民族への思いを託して描いた壁画の除幕式だ。「壁画は民族間の相互理解のシンボルとなる」。ジョージ・プラデル市長(62)はこう強調した。

     この町は90年代前半まで、住民のほとんどが白人だった。だが、コンピューター関連企業の誘致を進めた結果、アジアや欧州から技術者が集まり、たちまち多国籍化した。市長は「あらゆる文化や宗教に門戸を開いていく」と話す。それが町の発展に不可欠と考えるからだ。

     ネイパービルの白人比率は推定8割強まで低下した。とはいえ、イリノイ州全体の7割強よりは高い。このまま移民や外国人が増え続けても、伝統的な地域社会とうまく融合できるのか。デジタル時代を象徴するかのように、一瞬にして地域の民族構成が変わることもあるグローバル社会は、既存のコミュニティーに「突然の隣人」との共生を求める。

     ご意見を郵便か、FAX=03・5255・2697、電子メール=2000nen@tokyo.nikkei.co.jpでお寄せください。

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