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2000年 地球人は
第1部 翔ける人々

「日本経済新聞 1面企画」


(15)知の遊牧民

 およそ1000年前、地中海をイスラムが支配した時代に栄えたスペインの古都コルドバ――。

 市内でホテルを経営するフェルミン・カルモナ氏(46)は当時の哲学者モセス・マイモニデスの像の前で足を止めた。「彼は信じられないような頭脳と行動力の持ち主だった」。像をみつめながら畏敬の念を表す。

 繁栄導く多様性

 せきを切ったようにカルモナ氏は話し続けた。「マイモニデスはユダヤ教徒としてイスラム統治下のコルドバで生まれ、キリスト教社会にも影響を与える哲学者となった」「医者として、また裁判官としても活躍した」「エジプトにも渡り、イスラム王朝の宮廷医かつユダヤ社会の指導者になった」

 西暦1000年ごろのコルドバは、イスラム王朝の後ウマイヤ朝がユダヤ、キリスト教徒との共存政策を打ち出し、多様な価値観を持つ地球人たちが集まる開放都市として輝いた。人口は周辺地域を加え約50万人。ローマが3万5000人程度の時代である。地元のイスラム史研究家アル・ファローキさん(57)は言う。「コルドバは先進文明を誇る『世界の首都』だった」

 その後、キリスト教社会が十字軍の旗を掲げ、欧州は宗教対立の時代を迎えるが、マイモニデスはそのなかを開放社会の申し子として駆け抜けた。

 カルモナ氏はいま、コルドバのイスラム、ユダヤ文化遺産を保護するボランティアの先頭に立つ。「2つの宗教」に生きたマイモニデスの足跡を守りたい。自らはカトリックだが、信仰と矛盾するとは思わない。

 4000億ドルの大合併

 およそ100年前、欧州が国民国家間の闘争に明け暮れていた時代に、国を捨てた移民を大量に受け入れたニューヨーク――。

 有力米銀JPモルガンの創始者の一人ピアポント・モルガンの伝記を昨年出版した作家のジーン・ストラウスさん(53)が、街のなかにいまも博物館として残る旧モルガン邸で語った。「モルガンが実現させた企業合併は、今でも史上最大です」

 1900年末、モルガンは鉄鋼王アンドリュー・カーネギーにひそかに打診した。「米国の鉄鋼各社を大同合併させたい」。翌年、合意が成立し誕生したUSスチールの株主資本は14億ドル。ストラウスさんによれば、「これは当時の米国の国内総生産(GDP)の約7%。いまのGDPに引き直すと4000億ドルを上回る」。世界を驚かせた米アメリカ・オンライン(AOL)とタイム・ワーナーの合併会社(時価総額2500億ドル)をしのぐ規模だった。

 貧しいスコットランド移民の子から鉄鋼王にのし上がったカーネギー。大西洋をまたにかけて金融帝国を築いたモルガン。ストラウスさんはこの2人の地球人を、活力ある開放社会を築きつつあった米国の姿にダブらせる。「ニューヨークが世界の経済首都に躍り出たのは、それから間もなくのことでした」

 そして2000年、インドの地方都市プネー――。

 新しいミレニアム(千年紀)を生きる地球人アジート・パティール氏(28)、アショーク・カルラヤ氏(28)の2人は、ボンベイから南東へ200キロにあるこの町にいた。

 地球半周し再会

 「今晩中に何とか仕上げてしまおう」。2人が旗揚げしたコンピューターソフト会社、ベルテックス・ソフトウエアは世界から舞い込む注文をこなすため、午前零時を回っても明かりが消えない。

 きっかけは1通の電子メールだった。「プネーに戻って会社をつくる。一緒にやらないか」。ソフト技術者としてロンドンにいたパティール氏が、米マサチューセッツ大学に在籍中のカルラヤ氏に打診した。2人は地元プネー大学の同窓生。カルラヤ氏は即座に「了解」と返信した。1996年3月、ロンドンと米東部から「地球規模のUターン」を果たした2人は、プネーでがっちりと握手を交わした。

 情報技術(IT)を武器にした新しい地球人は、軽やかに世界を回遊する「知の遊牧民」である。1000年前のコルドバ、100年前のニューヨークが宿した開放社会の活力は、彼らの手でいま世界に広がろうとしている。

 パティール、カルラヤ両氏は力強く言った。「IT時代の世界首都といえば米国のシリコンバレーだけど、才能さえあれば、どこにいたって仕事は山ほどあるさ」=第1部おわり

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