主要
政治・経済
国際
マーケット
産業・流通
店頭・VB
社会
スポーツ
列島ビジネス
社説・春秋
トップ人事
おくやみ
新製品
自動車
発表資料
経済指標
日経調査
●日経プラス1
●日経産業新聞
●日経流通新聞

きょうのクイズ
ザ・ランキング
出張・旅行予約
競馬
ゴルフ
進学ナビ
転職ナビ
2000年 地球人は
第1部 翔ける人々

「日本経済新聞 1面企画」


(10)モザイク家族

 カリブ海に浮かぶ仏領グアドループ。フランス国民議会(下院)議員のジャック・ウクラン氏(53)とアルメル・ルセさん(37)はこの美しい島で2000年を迎えた。

 2人は15年連れ添った仲だが、結婚はしていない。その代わり半月前に裁判所で、新しい家族の形態を保証する「PACS契約書」なる書類に署名したばかり。娘も一緒の今回の旅は、新婚旅行ならぬ「新PACS家族」の記念旅行である。

 新たな法的保証

 PACSとは「連帯市民協約」の略語。フランスで導入された、結婚しないカップルの地位を法的に裏書きする制度だ。

 「結婚という伝統的な形態は嫌だが、内縁関係を超えた法的な保証が欲しい」。パリ郊外のポント・コンボ市に住む2人がこう考え、新制度にたどり着くまでには長い道のりがあった。

 ウクラン氏は一度、離婚を経験している。「制度の歯車となり、面倒な儀式に引きずり回される結婚という形式には、もう戻りたくない」。ルセさんも、結婚は教会や証人の権威に頼るもの、と懐疑的だ。

 10組の夫婦のうち4組が離婚するといわれるフランス。結婚に背を向け、同せい生活を続けるカップルは200万組を超える。15年前に「共同生活」を始めたウクラン氏たちも、当初は法的裏付けのない関係に満足していた。

 2人の心境に微妙な変化が生じたのは、娘のモルガヌちゃん(5)の問いかけがきっかけだった。「パパとママが結婚衣装を着た写真はどこにあるの」。うまく答えられないことが、もどかしかった。結婚しているカップルより税負担が重いことにも不満が募っていた。

 そんな2人に耳よりな話が持ち上がった。同性愛や男女の非婚カップルにも税制、社会保障などで結婚に準じる待遇を与えるPACSが、足掛け2年に及ぶ激論の末、法案成立目前までこぎつけたのだ。1999年10月、ウクラン氏も議員として一票を投じ、新法は成立した。

 自由に契約解消

 双方の合意が必要な離婚手続きと異なり、PACSならいつでも一方的に契約を解消できる。自由な男女の結びつきにこだわる2人にぴったりだった。「娘にも、これがパパとママの愛情のあかしよ、と証明書を見せられるわ」とルセさんは喜ぶ。

 ウクラン氏には別れた妻との間に27歳になる娘がいる。北アフリカ出身の男性と住んでいるが、彼女はカトリックで彼はイスラム教徒。宗教が別々で、教会でもモスクでも結婚しにくい。PACSはそんなカップルにも新しい選択肢になるのでは。2人はそう考えている。

 国境を超える人の行き来が絶えないグローバル化の時代。宗教や民族の異なる人同士が出会い、きずなを深める機会は格段に増えた。家族の結びつき方や姿そのものも、モザイク模様のように多彩になってきた。

 米バージニア州に住む岡田要氏(46)の一家4人は、家でお節料理を食べながら2000年の年明けを祝った。4人の顔立ちや肌の色はさまざま。日本人の夫に米国人で白人の妻、7歳の息子と5歳の娘はそれぞれ台湾とコロンビアからの養子だ。

 夫婦は子宝に恵まれなかった。妻のリサさん(47)が養子をもらうことを提案。「血のつながりがないのに」と一時寝込むほど悩んだ夫も、引き取った赤ん坊の笑顔を見て迷いが吹き飛んだ。「いまでは3人目の養子をもらうことも考えている」

 米国では海外からの養子縁組が急増、98年だけで1万6000件を上回る。養子のいる家庭はすっかり珍しくなくなった。

 一方で、旧来の価値観や家族の形態を重んじる人たちも多い。フランスでもPACS法案審議の際、最大の争点になったのは「伝統的な家族制度を破壊し、社会を不安定にするのではないか」という点だった。

 他人に強要せず

 PACS契約を結んだウクラン氏も、反対意見は十分承知している。だから、他人にPACSを押しつける気は全くない。1人1人が自立した個人として、納得のいく形を選び取っていけばいいと思う。昨年、別れた妻との間の別の娘(21)が結婚すると言い出した時も、素直に受け入れ、祝福した。

 実はウクラン氏自身、年老いて人生の終わりが近づいたら、ルセさんと結婚してもいいと考えている。関係を維持する道具としての結婚でなく、愛情を保ち続けた結果としての結婚。「それならいいわね」。ルセさんも深くうなずいた。

「2000年 地球人は」トップページへ戻る

NIKKEI NETの最新情報は画面を更新してご利用ください。
掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権は日本経済新聞社またはその情報提供者に帰属します。
このホームページに対するご意見・ご感想は webmaster@nikkei.co.jpまでお願いします。
NIKKEI NETはインターネットエクスプローラー4.0、Netscape4.0以上でご覧いただけます。

Copyright 2000 Nihon Keizai Shimbun, Inc., all rights reserved.