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女子の表彰式が始まっても、日本男子の山下泰裕監督の抗議は続いていた。何とも腑(ふ)に落ちない判定だ。悔し涙を浮かべた篠原はやりきれない表情を浮かべ、うつむいたまま表彰台に立った。
連覇を狙うフランスの英雄ドイエとの決勝戦。1分49秒、ドイエの内またを篠原が透かした。背中からドイエが倒れ、篠原は横向きに転倒。間近の副審は「イッポン」のポーズで篠原の一本勝ちを示した。篠原も思わずガッツポーズ。だが、主審のジャッジは逆にドイエの「有効」とした。
これでドイエはが然、有利になった。片えりで指導、消極的戦意で注意を取られ、いったんポイントは並んだが、残り1分を切って篠原の捨て身の内またを返して有効を奪った。逃げ切りを図るドイエ。無情のブザーが鳴った。
「だれが見ても、一本でこの勝負は終わり」と山下監督。だが、試合後の猛抗議にも判定は覆らず、「何もしてやれなくて、ごめんな」とわびると、篠原は「すいませんでした」と応じた。
決勝戦でのドイエとの対戦を篠原は待望していた。1997年のパリの世界選手権決勝で反則負け。この時もジャッジが問題になったが、その敗戦をバネに強くなったという思いがある。しかし、ようやく巡ってきた雪辱の舞台で、再び悲劇に見舞われようとは。
88年ソウル大会の斉藤仁以来の最重量級の覇権奪還はならなかった。しかし、篠原は言い訳を一切しなかった。投げた場面については「感覚も何もないです」。さらに「弱いから負けた。(ドイエは)強かったです」。本当は勝っていたと思っているのか、ありのまま敗北を受け入れようとしているのか。「もう、いいですか」と質問を打ち切って、それ以上の言葉は胸の内にしまい込んだ。
(岩本一典)
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