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(9/21)井上、パーフェクトで末恐ろしい――柔道・上村春樹氏
全日本柔道連盟強化副委員長・上村春樹氏
 上村春樹・全日本柔道連盟強化副委員長 男子100キロ級の井上康生(東海大)の柔道は本当にパーフェクトだった。こちらがここだ!と思うことを確実にこなし、勝てる機会を1回も逃していない。去年のバーミンガムで優勝してからものすごい勢いで成長している。1本を取るための柔道をやっているし身に付けた技を効果的に出していた。それは1回戦が16秒、2回戦で14秒という試合結果にも表れている。

 評価したいのは「最後まで攻め通す柔道」を展開したこと。きめ細かさも忘れず、気負うわけでもなく、平常心で戦っていた。場内は対戦相手の国以外、皆井上の味方だった感じで、攻めにいく気迫や決める技で魅了した。観客をも味方に引き込む独特のキャラクター、魅力がある。まさに勝つために五輪に来た男だ。印象に残ったのは決勝でギルとの試合。バルセロナ五輪から常に上位に来ていて、試合のつぼを心得た手ごわい選手だが、井上は内またが入るその1回を見逃さなかった。

 井上は世界と戦うための柔道を見せた。自分でチャンスをつかむための気迫や気概を持つ選手が金メダルを獲得できる。吉田秀彦のように最高と最低の時期を経験したベテランでもアクシデントに遭遇する。自分が1番、という自信があればアクシデントを起こす機会を作らせない。躊躇(ちゅうちょ)も見られず度胸の良さを感じた。これを弱冠22歳でつかんでいるのは末恐ろしい。

 同じ体重の選手でも身長は対戦相手の方が大きい。ただ井上は精神が安定し自分を冷静に見る眼を持っている。それに立ち向かう熱いハートもある。強い選手は2通りあると思う。何が何でも前に突っ込む「ファイター型」と、技術レベルが高い「テクニシャン型」。テクニシャン型が増えると冷静さを求められ、ともすれば熱いハートを失いがちだが、井上はこの2つの型を兼ね備えた選手だ。円熟味、というのがあるがこれを身に付けるには時間がかかるものだが井上はすでに「心技体」のいいものを使いこなせている。

 今後は背負い投げをもっと強力にして技のパターンも幅広くすることに取り組んで欲しい。自分より重い無差別級へ挑戦していくはず。150―170キロをやっつけて世界で1番強いということを認めてもらう。そのためには相手を傾けて、体重を利用した技を入れたりすかしたりといったことも必要になる。それで無差別級のチャンピオンにもなれる。

 一方女子78キロ級の阿武教子(警視庁)。アトランタ五輪で初戦敗退の亡霊が出てきたのか、不安をはねのけられなかった。今日の試合は最悪で、自分の柔道が出来れば何の問題はなかった。一生懸命思い切って敗れたなら仕方がないが、今回は本人も悔しいだろう。手首をケガして練習を積んでいない不安があったようだ。いいところが1回も出ない柔道だった。コーチの話ではこの1、2日はあまり眠れていないという。不安をぬぐいきれないのが大きな課題だ。このままで終わって欲しくない。

 柔道選手は満足してこのままでいい、と思える状況になるまで辞めないもの。阿武は長い4年間を経て2度目の失敗をしたが、自分を作るために何をしていくべきか考えて取り組んで欲しい。ケガさえしなければ、という「たら・れば」は勝負する上で禁句。むしろケガやアクシデントをしのぐ力を持つのが勝負師の世界だ。そこまで考え抜くことが彼女にはできなかった。でも本当はできるはずの選手だし、もっと自分を見つめて勝つためにはどうしたらいいか考えて欲しい。何も今回が最後の試合ではない。このアトランタ、シドニーの悔しさを思い出せば努力できるはずだろう。もうワンランク上を目指して悪いときでもベストの戦いができる選手になって欲しい。

 22日は男子100キロ超級に篠原信一(旭化成)が登場する。普通通りの柔道をやれば間違いなく金メダル。ただ五輪は4年に1度で、畳の上に立った瞬間、選手に何を思わせるか予測できない。怖くなることだって起こりうる。ただ普通に考えれば1番安定した戦いを期待できる選手だ。21日、選手村に戻る篠原に会ったら「まだ(シドニー五輪で)だれも男で世界チャンピオンが勝っていないんですよね」と冗談が言えるほどの余裕を持っていた。女子78キロ超級は山下まゆみ(大阪府警)が出る。彼女はマークされていない。強豪ぞろいの階級だが自分の柔道をやることでメダルを目指して欲しい。(シドニーで21日深夜、聞き手は遠藤繁)

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