 | | 金メダルを手に笑顔を見せる滝本〔共同〕 |
「一発屋」が、大舞台で真骨頂を発揮した。「のるかそるかの勝負をしたかった。いつ一本取るか、そればかり考えて試合をした」。伏兵が攻め抜いてつかんだ金メダルだ。
準決勝はアトランタ五輪王者のブーラ(フランス)から、体落としで技ありを奪って優勢勝ち。大激戦となった決勝も、1997年パリの世界選手権覇者の趙麟徹(韓国)から、得意のそで釣り込み腰で先に有効を奪うと、その後も猛攻を続け、相手に「注意」が告げられた。
知名度こそ低いが、豊かな才能は早くから認められていた。見栄えのする数々の大技を持つ。その半面、受け(守り)の弱さが難点だった。「ムラがあるのが彼の柔道。今日は120パーセントの力を出した。正々堂々の真っ向勝負は、素晴らしかった」と山下泰裕・男子監督はたたえた。
中高一貫制の柔道私塾「講道学舎」(東京・世田谷)出身で、バルセロナ五輪王者の古賀稔彦、吉田秀彦の後輩。この2人と同様、背筋を張って、しっかり組む正統派の柔道を貫く。その美しさは魅力だが、昨年4月の全日本選抜体重別で優勝しながら、「受けが弱く、外国選手が苦手」との理由で世界選手権の代表入りを見送られた。
それからは「代表どうこうでなく、自分のペースで柔道を楽しむ」と心に決めたという。腐ったわけでない。いい意味で開き直ったということだろう。「朝の計量に行ったら、相手はすごい顔ぶれだった。だけど、これが最初で最後の五輪。勝つも負けるも一本。それを満喫したかった」。遅咲きの25歳が、スタイルを貫いて頂点に立った。(岩本一典) |