|
伊藤国光・鐘紡陸上競技部監督 男子1万メートル決勝はアトランタ五輪でも1、2位の競り合いがあったが、25日のレースもなかなか見られない競り合いのレースだった。高岡寿成(鐘紡)が7位入賞したが、この種目の場合、日本記録より順位を重視した。高岡はレース前の時点ではエチオピア勢3人、ケニア勢3人、モロッコ1人、ベルギー1人の8人が先頭集団になると想定。結果としてレースは大きな縦の集団ができあがった。高岡は先頭集団の最後尾についたが、ペースの上げ下げのコントロール役を担った格好。レースのペースは62―66秒で高岡にとってはぎりぎりのライン。1周のペースが落ちたのも高岡には好都合だった。
高岡の自己ベスト更新は日ごろから目標にしていたことで、すでに日本記録を出していなければならなかった。いいレースに巡り合えていなかったので、今回やっとたどり着いた。先頭集団の想定8人のうち1人でも2人でも落ちるなら、入賞は間違いないと考えていたし、読み通りの結果になった。高岡は予選よりも決勝のタイムが良くなるタイプ。予選が「練習」になってもっとタイムが伸びるので、その意味で25日の決勝は安心していた。
先頭集団は途中で一気にスピードアップしたが、あれには対応できない。今回は8位以内に入って入賞することが目標だったし、タイムは考えていなかった。コンディションによって記録は変わるものである。
花田勝彦(エスビー食品)は最初の選択で後ろの集団に入って、その先頭になってしまった。第2集団を引っ張る役になってしまって、3000―4000メートルまでその位置にいた。これは長距離走では足の負担になる。特に日本選手は後半に影響が出る。先頭集団に入っていたら高岡と競っていただろう。ただその選択が良いか悪いかは結果から言えること。高岡の判断が逆になることだってありえた。
金メダル争いでは最後まであきらめなかった世界記録保持者のハイレに軍配が上がった。ハイレは負けないという彼の信念をあらわにしたレースだったし、負けられないという思いが突き動かしたのだろう。ポールは一気に前に出たが、最後の10メートルで態勢が崩れた。今回はハイレを倒す絶好のチャンスだったが。
これまでのシドニー五輪の陸上競技を振り返ると力のある選手が力でねじ伏せて勝っているという印象がある。女子マラソンの高橋尚子はその典型。これまでは力があっても絶対に勝てるとは言えなかった。男子1万メートルの結果も力のある選手がねじ伏せた内容。シドニーの気候が真夏のように暑いのではなく、むしろ涼しいので力のある選手がその力を存分に出してくる。その影響が出ていると感じている。(シドニーで25日深夜、聞き手は遠藤繁)
|