 | | 三井海上男子監督、ソウル五輪マラソン代表・新宅永灯至氏〔共同〕 |
高橋の勝因は、レースをまず自分得意の型に持ち込んだことにある。18キロすぎで抜け出した最初のスパートで、そこまで5キロ17分20秒前後だったペースが、16分50秒前後の非常に安定感のある運びになった。序盤はぎくしゃくしていたが、自分のペースになったことで伸び伸びした動きに変わった。強敵のロルーペが早めに脱落したことで、気持ちの負担も減ったはずだ。
35キロ付近上りでの2度目のスパートは、シモンとのトラック勝負を避けたかったから早めに仕掛けたのだろう。駆け引きを得意とする相手に、つけ入るスキを与えない完ぺきなタイミングだった。
高橋の走法は上下動のないコンパクトなピッチ走法で、アップダウンの多いこの難コースに適している。大きなストライドのシモンが後半にスタミナをロスしていたのとは好対照で、最後までリズミカルな腕振りは崩れなかった。
終始落ち着いたレース運びができたのは、調整が成功して自信を持ってスタートラインに立てたから。中でも注目したいのは、海抜3,500メートルの超高地での練習だ。詳しい内容は不明だが、調子が良ければどんどん突っ走る高橋でもこの高度ではペースは落とすしかない。それによって故障を避け、なおかつ心肺機能には強い刺激を与える。高地民族でない日本人がどうすれば勝てるのか、という小出監督の思いが集約された、かけだったと思う。
山口は体調は悪くなかったのだろうから、レンデルスがやったように飛び出してほしかった。高いレベルに挑んでつぶれた市橋は、内容は悪くなかった。ただ、メダルを取りに行くにはまだ本物の力が不足している。
(新宅永灯至氏=しんたく・ひさとし 三井海上男子監督、ソウル五輪マラソン代表)
〔共同〕 |