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一瞬の出来事だった。5キロすぎの給水ポイント。前を行くアフリカの選手と、後ろの選手に挟まれるようにして、山口が転倒した。バルセロナ五輪男子で、優勝候補だった谷口浩美が転んだ。悪夢のシーンが、シドニーで再び起こった。
シューズが脱げ、大きく遅れた谷口とは違い、山口はすぐに立ち上がって、集団に戻った。「全然、影響はありませんでした。転倒は、もう昔のことです」。レース後、赤く泣きはらした目で、山口はそう言った。右足のすねに、すり傷のあとが赤く2本。本人は否定するが、転倒した精神的な衝撃は、その後のレース展開で山口に「おびえ」を与えたようだ。
18キロすぎに高橋がペースをあげたとき、ためらった。「どうしようかな。ついていったら、後でつぶれるかも」。強気になれない気持ちが、メダルへの可能性を摘んだ。25キロでは、トップから1分以上離された13位まで後退。「自分が何番を走っているか分からない。入賞も無理かな」。おびえが不安に変わった。
小学校時代、「2000年のわたし」という題の作文を書いた。「マラソンでオリンピックに出たい」。その夢は果たした。終盤、バルセロナの谷口と同じように追い上げた。地力があることは十分に示した。それだけに、勝負どころでのちゅうちょが悔いに残る。「高橋さんと違って、勉強不足で駆け引きもまだまだ」。反省の方が多い7位入賞だった。(共同)
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