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【シドニー24日=中前博之】「すごく楽しい42キロだった。もっともっと走りたい」――。42.195キロの激闘を制した高橋尚子選手(28)を、メーンスタジアムを埋め尽くした11万人の大歓声が包み込んだ。ルーマニアの強豪シモン選手(27)の猛追をしのいだヒロインは、会心の笑顔でゴールを切った。日本女子陸上界にオリンピック史上初の金メダルをもたらした快挙に国内でも歓喜の声が上がった。
午前9時(現地時間)のスタートから約2時間20分。気温は14度でも、強い日差しが暑く感じられる五輪公園のメーンスタジアムに、高橋選手が真っ先に飛び込んできた。苦しそうに口を開け、目をしかめては必死に足を前へ運ぶ。一時は200メートルあったシモン選手との差は100メートルを切り、さらに縮まったが、最後は両手でガッツポーズし、笑顔でゴール。
インタビューには「42キロとは思えないほど短かった」と疲れも吹き飛んだ明るい表情。「明日からまた違った目標をもって楽しんで走りたい」と結んだ。
ゴール直後の高橋選手は、観客席の応援団にあいさつ向かい、日の丸の小旗を持ってウイニングランを始めたが、落ち着かない様子で終始キョロキョロ。育ての親の小出義雄監督(61)の姿が見つからなかったためだ。
一方、観客席では小出監督が寄せ書きの入った日の丸を手渡そうと、「タカハシー」と大声で叫んだが、高橋選手は気付かずにウイニングランを続ける。小出監督は「おれは4年間これを待ってたんだ」と叫びながら、短距離走のような勢いで競技場内の通路を駆け出したが、なかなか追いつけない。
結局、場内を一周。報道陣で混雑するミックスゾーンでやっと会えた高橋選手に、「やったなー」と声をかけた。高橋選手は小出監督の肩に顔を埋め、目には涙があふれた。レースでは「本当に高橋はつらい練習に耐えて強くなってくれた」という小出監督の言葉を入れたお守りをユニフォームに縫いつけて走ったという。「監督に認めてもらえたのが自信になった」と高橋選手。
縁起をかついで大好きなお酒を2週間断っていたという小出監督は「これでうまいビールが飲める。こんな酒飲みのへっぽこおやじでも、頑張っていればこういう娘(こ)に巡り合えるんだよ」と満面の笑みを浮かべた。
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