NIKKEI NET
シドニー五輪2000
最新ニュース
競技別
解説者の目
五輪ビジネス
豪SMH紙から
連載・コラム
from シドニー支局
競技日程
選手紹介
競技会場
フォトギャラリー
国別メダル数
from シドニー支局
消えるIOCスキャンダルの記憶・コールズ氏の復権
招致疑惑で昨年、SOCOG副会長兼理事を辞任したフィリップ・コールズ氏〔著作権:AP.2000〕
 シドニー五輪開幕の前日、シドニーのシンボルのひとつ、ボンダイビーチをオーストラリアの元五輪選手が聖火ランナーとして走る。国際オリンピック委員会(IOC)の五輪招致スキャンダルの中心人物フィル・コールズ氏だ。

・最高の舞台与えられる

 昨年6月にシドニー五輪組織委員会(SOCOG)の副会長兼理事を追われたはずだが、ボンダイビーチという最高の舞台で聖火ランナーを務める名誉をSOCOGから与えられた。SOCOGはまた自粛するはずだったIOCファミリーへの接待を、いつの間にか復活させた。あれほど大騒ぎしたスキャンダルがウソだったかのようだ。

 コールズ氏はカヌー競技の豪州代表としてローマ、東京、メキシコ大会に出場。IOCでは五輪開催地を決める立場にあった。そのコールズ氏に対して2002年冬季ソルトレーク五輪招致委員会から過度な接待を受けたうえ、2004年に夏季大会が開催されるアテネの招致委員会からも96年に高価な貴金属を受け取ったとの疑惑が浮上したのだった。

 この疑惑に対して、IOCは昨年6月に開かれたソウルでの理事会で、「けん責」と「2年間のIOC委員会活動停止」という処分を下した。同氏はIOC委員に引き続きとどまったが、その代わりとしてSOCOG副会長兼理事という地位を手放した。IOCを辞めさせられなかったことから、「甘い処分」と地元豪州のメディアは一斉に批判した。

 こうした実情を踏まえて、SOCOGはコールズ氏が強く希望していたボンダイビーチを聖火ランナーとして走ることを認めなかった。

・「シドニーは慈悲深い街」

  ところがである。SOCOGは今月になってコールズ氏がライフ・セービング・クラブのメンバーたちを引き連れてボンダイビーチを走ることを認めてしまったのだ。コールズ氏はライフ・セービング・クラブのメンバーとして50年以上もボンダイビーチで活動してきた。そして「シドニーで五輪が開かれるときには聖火ランナーとしてボンダイビーチを走りたい」というのが長い間の夢だった。「それならやはりコールズ氏にボンダイビーチを走ってもらい、夢をかなえてあげよう」ということになったわけだ。

 マイケル・ナイトSOCOG会長もコールズ氏が豪州の五輪活動に果たした役割はとても大きいとしたうえで、「シドニーは慈悲深い街だ。確かに彼は失敗をしたがすでにその報いは受けた」とコールズ氏の“みそぎ”は済んだとの見方を示した。

コールズ氏が聖火ランナーとして走るボンダイビーチ
 さて、そのナイト会長だがソウルでのIOC理事会に出席し、IOCの不祥事のおかげで「SOCOGは(スポンサー収入などの落ち込みによる)予算不足に直面した」とIOC委員の前でIOC批判を展開した。そのうえでIOCは「予算削減の痛みを分担しなければならない」と強い調子で訴え、サマランチ会長をはじめとするIOCファミリーへの接待経費を削減する方針を表明しているのだ。

 具体的には550万豪ドル(1豪ドル=約63円)をIOCの接待費の削減で捻出するとし、五輪に先だって開催される慣例となっているIOCファミリーに対する歓迎式典の簡素化や、従来IOC委員に1人1台配車していた運転手付きの車を取りやめて「共同で使ってもらい、シドニー市民と同じ行動をとってもらう」(ナイト会長)と主張した。

 しかし、SOCOGのサンディー・ホルウェー事務総長に最近、インタビューした際に、その点を確かめてみると、驚くべき答えが返ってきた。

 「IOC(に対する接待)の変更はとても小さいものとなった。輸送、食事、式典などは当初の予定通り行う」という。

 さらに、ホルウェー事務総長は「IOCのメンバーは従来通り1人1台の車が与えられる。歓迎パーティーについても変更はない。もともとSOCOGが開催する予定だったが、予算が足りずに開催しないということにいったんは決めた。だが主催をSOCOGからAOC(豪州オリンピック委員会)に代え、費用はAOCが負担することになった。過去と同じような規模のパーティーになるだろう」と続けたのだ。

 話が違うのではないか!

 サラマンチIOC会長の宿泊用としても、シドニー湾を望む高級ホテル「リージェント・シドニー」にある大理石ぶろを備えた300平方メートルのスイートルーム(1泊3,000豪ドル)がSOCOGによって用意される予定だ。

・政治的パフォーマンス

 昨年ソウルでナイト会長が厳しい態度をとったのは「SOCOGは“汚れたIOC”とは関係ない」という印象を豪州の国民に植え付けることを狙ったものだったにすぎないようだ。ナイト会長はニューサウスウェールズ州政府の五輪大臣を兼務する政治家だけに、IOCスキャンダルの火の粉がSOCOG会長を務める自分に降りかかるのを避けるための巧妙な「政治的パフォーマンス」に過ぎなかったのかもしれない。

 しかし、“慈悲深い”人々はナイト会長やSOCOG関係者だけではないらしい。豪州で影響力の強いラジオ番組「アラン・ジョーンズ・ショー」で、コールズ氏の聖火ランナーの是非を問うアンケートを実施したところ、コールズ氏を支持するリスナーが圧倒的多数だったという。政治家ナイト会長は、こうしたシドニー市民の声を機敏に酌んで、コールズ氏を復権させる決断をしたというのが、たぶん真相だろう。

 開幕まであと50日を切り、五輪が近づくにつれ、シドニー市民のなかからスキャンダルの記憶は消えつつあるように思える。大会が始まり数々のドラマが生まれると、その記憶は完全に無くなってしまうのだろうか…。

(シドニー支局=大石信行)

[8月1日]

[from シドニー支局]その他の記事 --------------------
「ピンバッジ」熱にわくシドニー
20世紀最後の五輪、シドニーが残した課題 
開会式にカンガルーが登場しなかったワケ
ヤワラちゃんにおすすめ、シドニー1日デートコース
豪州スポーツ支えるナゾのマーケティング会社
ゲイの閉会式参加を巡って議論沸騰
五輪騒ぎ避けシドニー市民50万人が脱出
食堂は甲子園グランド超す広さ・選手村探検
穏やかだが念のため雨具持参を・五輪期間中の天気
消えるIOCスキャンダルの記憶・コールズ氏の復権
極秘の聖火台を公開・これもオージー流?
シドニー五輪はドーピングの競演に?・衝撃広がる告白本
五輪競技番組をパソコン配信・豪VB、「かけ」も検討
スポーツ王国オーストラリアの秘密
注目のパラリンピック、本大会に先駆けネット放送開始
売れ残るチケット・相次ぐ不祥事に「五輪離れ」
アボリジニとの「和解の一歩」・聖火リレー出発
「IT五輪」のはじまり・パソコン総数7200台
Copyright 2000 Nihon Keizai Shimbun, Inc., all rights reserved.