 | | 報道陣の前にひょっこり姿を現した聖火台〔著作権:AP.2000〕 |
あっと驚くことが、今月19日に起きた。オーストラリアの人気プロ・スポーツ、ラグビー・リーグの記者会見に出席するために、五輪スタジアムに集まった報道陣の目の前で、非公開のはずの聖火台がせり上がり、全貌(ぜんぼう)をあらわにした。聖火台への点火といえば、五輪のハイライト中のハイライトで秘密のはずなのに…。
・「ノー・ウォーリーズ」
豪州に暮らしていると、日本的感覚からすると驚かされることがよく起こる。ニュース番組が定時に始まらなかったり、電車が表示されている行き先とは別の方向に行ったりする。それでも「ノー・ウォーリーズ(心配することないよ)」と気にしないのがオージー(豪州人)気質だ。ただちょっぴり「これで五輪の運営も大丈夫?」との不安もある。
ラグビー・リーグの会見に出席していた記者の話しによると、問題の聖火台は五輪スタジアムの北側にある観客席の最上部から、せり上がってきたもので、高さはおよそ6メートル。約1分程度かけて上昇し、およそ5分かけて下降して、姿が見えなくなったという。工事中のテストだったらしいが、あまりにもタイミングが悪すぎた。
・伝説の名選手が点火か
地元マスコミからは「メルボルン大会の金メダリストで、現在は多発性硬化症で車いすの生活をしているべティー・カスバートが車いすに乗ったまま点火するための仕組みに違いない」といった見方が浮上している。カスバートさん(62)は56年のメルボルン大会の女子100メートル走などで3つの金メダルを獲得。さらにカムバックした64年の東京大会で400メートル走でも金に輝いた豪州の伝説的名選手だ。
 | | 聖火台への点火がうわさされる豪陸上の伝説的名選手ベティー・カスバードさん(左下)〔著作権:AP.2000〕 |
聖火点火シーンといえば、五輪開会式の最高機密事項。前回のアトランタでは、60年ローマ五輪の金メダリストでボクシングの元ヘビー級チャンピオン、モハメッド・アリさんがワイヤの仕掛けに火をつけると、火の玉がゆっくりと空へ舞い上がり、聖火台に火がついた。
前々回のバルセロナでは最終ランナーから火を受け取ったアーチェリー選手、アントニオ・レボリョさんが弓を放って点火した。
98年の長野冬季五輪の開会式では、元フィギュアスケート選手、伊藤みどりさんがリフトで上昇し聖火台に点火したのは記憶に新しい。
とんだハプニングにシドニー五輪組織委員会(SOCOG)もビックリ。あわててマスコミ各社に「スタジアムの北側のスタンドに出てきた構造物は聖火台を支えるマストであって、聖火台ではありません」というファクスを送りつけてきた。「マストも聖火台もあんまり変わらないのでは?」と各メディアの苦笑をかったのは言うまでもない。
今年4月にはSOCOGが発行した大型記念入場券が、大きすぎて競技場にある自動改札機で使えないことが判明し、ナイトSOCOG会長が平謝りする場面もあった。大型のチケットは係員がチェックするそうで、これでは何のために自動改札機が設置されたのだか分からないとの批判も出た。
・トライアスロンでも大混乱発生
これはSOCOGの責任ではないが、同じ4月に豪州の西部にあるパースで開催されたトライアスロンの世界選手権では、水泳、自転車に続く最後の10キロ走で、本来なら当然10キロあるべき距離が8キロしかなかったことが判明した。参加した多くの選手の記録が、陸上の1万メートルの世界記録を上回り、会場は大混乱したという。
日本なら大問題となりそうな話しだが、でもここは豪州。「ノー・ウォーリーズ、メイト(=直接的には“仲間”の意味だが、親しい人への呼びかけに使う)」の一言で片づいてしまう。
さて、五輪本番まで2カ月を切った。運営面での不安は残る。ただ、個人的には「これからどんな“面白い”失敗が出てくるのか」という不謹慎な期待も実はかなりある。
(シドニー支局=大石信行)
[7月24日]
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