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売れ残るチケット・相次ぐ不祥事に「五輪離れ」
人影もまばらな五輪チケットの直販店
 シドニー五輪の開幕まであと3カ月。この時期になっても、各競技の入場チケットの多くが売れ残っていいる。チケット収入でシドニー五輪の総収入のうち約22%を稼ぎ出さなければならないはず。「大丈夫なのだろうか…」と心配になってきた。

・総数の4割、270万枚に相当

 「サッカーの決勝戦のチケットが買えたよ。信じられない」 地元の大学生ショーン・マーロンくん(22)がたった今購入したばかりの五輪チケットをうれしそうに見せてくれた。ショーンくんと出会ったのは、シドニー五輪組織委員会(SOCOG)が売れ残ったチケットを売りさばくためにシドニー市内に開設した「チケット・ボックス・オフィス」第1号店だ。

 五輪チケットの販売は昨年7月にスタートしたが、3次販売を終えた6月初めの段階で、チケット販売総数の約4割に当たる270万枚が売れ残っていることが判明。

 これまで、チケットを購入するためには五輪スポンサーである新聞社ニューズ・リミテッド発行の新聞に掲載されている申し込み手順に従って応募するなど色々な制約があった。だがスポンサーの利益ばかりを考えた面倒な方法では、残る270万枚のチケットが売りさばけないと、あわてて設置されたのが「チケット・ボックス・オフィス」というわけだ。

 このボックス・オフィスを訪れたのはオープン初日の6月16日。昼休みの時間帯だ。当日の朝のニュースで「ボックス・オフィスの開設」がさんざん宣伝されたのにもかかわらず、店内には10人程度のお客しかいない。チケットを販売するSOCOGのスタッフの方が多いくらいだ。

 入店するなり、係りの人が「今日、販売中のチケット」というチラシを渡してくれた。

 野球11万枚、バスケットボール10万枚、ボクシング7万5000枚、柔道3万5000枚…などなど。ふと見上げると競技日程を記した大きなボードが掲げられている。売れ残りのチケットがある種目には赤いステッカーがはってあるが、ボードはほぼ赤一色だった。

 試しに野球のチケットの売れ残り状況を聞いてみると、日本対米国と日本対オーストラリアは完売だが、日本対韓国についてはまだまだ残席があるということだ。

サッカー決勝戦のチケットがまだ残っていた、と喜ぶ地元大学生のマーロンくん
・このままでは最終赤字も

 シドニー五輪の総運営予算は23億6500万豪ドル(1豪ドル=約64円)。この予算を支えるのは、まずテレビの放映権収入で10億3900万豪ドル。これにスポンサー収入の6億9400万豪ドル、チケット収入の5億3200万豪ドルが続く。チケット収入の比率は大きいだけに、このまま売れ残れば、シドニー五輪は最終的に赤字を抱え込んでしまう危険すらある。

 それにしても、なんでこんなにチケットが売れ残っているのだろうか。

 まずあげられるのが相次いだスキャンダルの影響。国際オリンピック委員会(IOC)の招致疑惑では、IOC委員でSOCOG理事兼副会長だった元五輪選手、フィリップ・コールズ氏がソルトレークシティー冬季五輪の招致委員会などから約6万豪ドルの接待を受けていたことが昨年初めに明らかとなり、地元メディアの批判を浴びた。

 昨年6月にはSOCOGが開会式に日米を主体とするマーチングバンドを編成する計画を進めていることが表面化し、地元世論は「なぜ外国人バンドを使うのか」と猛烈に反発した。

 さらに10月にはSOCOGが企業や金持ち向けに高額の五輪チケットをひそかに販売したため、一般への割り当てが減ったことが明らかになった。

 相次ぐトラブルがシドニー市民に“五輪離れ”を引き起こしてしまったというのは事実で、チケットが売れない理由の一つになっている。

 そして開・閉会式の1382豪ドル、平均でも100豪ドルというチケットの価格設定が高すぎたのも一因だろう。

・少ない人口

 だが「もっとほかの理由はないのか」と考えるうちに、ある五輪スポンサー企業の担当者の“つぶやき”を思い出した。

 それは「そもそも人口が少なく、米、欧、日といった主要市場から遠い豪州で五輪を開催することが無理だった」という一言だ。

 五輪は84年のロサンゼルス大会をきっかけに商業化が進んだ。商業主義の浸透は大会を肥大化させ、五輪の開催にかかるコストを膨張させた。2000年五輪が米国や欧州、日本などの大市場で開かれていれば、「観客も多く集まり、多額の金を出すスポンサーにとっても魅力ある大会となっただろう。チケットの売れ行きがぱっとせず、スポンサーの集まりが悪いのも開催地が豪州だからだ」という。

 これに対しては「米、欧、日しか五輪を支えることができないのか」、「これまで一度も五輪を経験したことがない南米、アフリカでの開催は事実上不可能というこのなのか」――などの疑問が浮かんでしまう。

 SOCOGの幹部は「チケットの販売は五輪期間中も続ける。チケットへの需要は大きく、大半を売りさばけるだろう」と言う。五輪の夢を世界に広げるためにも「なんとかがんばって売り切ってほしい」と応援したくなってしまった。

[6月21日]

(シドニー支局=大石信行)

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