 | | シドニー五輪組織委員会(SOCOG)本部の6階にはパソコンがずらりと並ぶ |
「ここは金融機関のディーリングルーム?」と見まがう光景が目前に広がる。100台近いパソコンが並ぶこの部屋があるのは、実はシドニー五輪組織委員会(SOCOG)本部の6階。SOCOGの建物はかつてシドニー・モーニング・ヘラルドなどを発行する新聞社、フェアファックスの本社ビルだったところでかなりの年代物。真新しいパソコンがずらりとならぶ姿は建物の外見とは対照的で壮観だ。
・世界企業並みの規模
早速、「この部屋は?」と質問すると、SOCOGのスタッフが「シドニー五輪の心臓部といってもいいところだ」と教えてくれた。
ここは通称TCC、正式にはテクニカル・コントロール・センターと呼ばれるシドニー五輪のIT(情報技術)システムをすべて取り仕切る中央制御室。およそ2000平方メートルの部屋に約500台のパソコンが並ぶ。
シドニー五輪にはおよそ200の国から1万人を超える選手が集まる。大会期間中の人出は1日あたり50万人を超え、報道陣も1万8000人となる見込み。運営側のスタッフでは、SOCOGの職員やボランティアなどで総勢12万人。使用されるパソコンの数は7200台にもなる。その規模は「世界有数の大企業に匹敵する」(ホルウェーSOCOG事務総長)ほど。
TCCには競技に使われる時計や計測器、ボランティアのデータなど、シドニー五輪にかかわるあらゆる情報が集中、24時間態勢で管理する。
例えば、TCCの仕事の一つである大会関係者や報道陣向けの資料発行。前回のアトランタ五輪で消費された紙は9000万枚にものぼったが、シドニーではTCCが中心となって印刷業務の効率的管理を徹底することで「最低15―20%を削減する」(米ゼロックス)計画という。
・「戦場の作戦本部」
SOCOGのスタッフはTCCについて「本番までに、壁を取り払って部屋を広げ、今の倍のパソコンを置く。そして部屋の前面には大パネルを設置して、どの会場でどんな競技が行われているか、一目で分かるようにする」と付け加えた。 まるで「戦場の作戦本部みたい」と想像が膨らんだ。
TCCの一つ壁を隔てて、ITCCと呼ばれる部屋も新たに作られた。ITCCの「I」はインターネットの頭文字。長野冬季大会でも大活躍したオフィシャル・インターネット・サイトの管理・運営を担当するチームが陣取る場所だ。TCCはこれまでに開催されたオーストラリアの五輪代表国内選考会でも利用されてきたが、ITCCの稼働は今月から。本番では60―80人のスタッフが総掛かりで最新の競技情報などをネットに配信するという。
五輪のオフィシャル・ウェブ・サイトが初めて登場したのはアトランタ大会の時。このときのヒット数は1億9000万にすぎなかった。長野冬季大会では6億3000万に増え、シドニーでは10億を超える見通しだ。長野の時、インターネットの総情報量は4.6テラバイト(テラは1兆)にものぼったが、これはフロッピーディスクを積み上げると高さが6.8キロにもなる数字。シドニーではこの数字を軽く超えるのは確実だ。
 | | SOCOGの建物はかつてシドニー・モーニング・ヘラルドなどを発行する新聞社、フェアファックスの本社ビルだった |
・動画解禁はアテネ以降に
気になるのはシドニー五輪オフィシャル・ホーム・ページのコンテンツだが、陸上、バスケットボール、野球、サッカー、体操など28競技について「ほぼリアルタイムで競技結果を報告する」(米IBM)予定という。例えば野球の場合、ボールカウント、塁上にはだれがいるのかなどが逐次分かる仕組みとなる。
ただ、動画による実況中継については、放映権を持つテレビ局の権利擁護という理由で、国際オリンピック委員会(IOC)が禁止しており、解禁は次のアテネ五輪以降になりそう。
最後にこんな疑問が沸いてきた。シドニー大会が「ラブ・ウイルス」などのサイバー・テロの標的となったらどうなるのだろうか。「それなら地元ニューサウスウェールズ州の警察がちゃんとサイバー・テロ対策をやっているよ」とそっと教えてくれる人がいた。
さっそく州警察に尋ねると、「サイバーテロ対策は秘中の秘で何も話せない。対策を話せば必ず破ろうとするハッカーが現れる」との答え。ITにすっかり頼ることになるシドニー五輪。少し不安になってきたのは私だけだろうか。
[6月7日]
(シドニー支局=大石信行) |