 | | サッカー解説者・金田喜稔氏 |
サッカー解説者・金田喜稔氏 優勝したカメルーンは、今大会を通じてこの決勝戦がもっとも良い出来だった。試合全般にわたって波がなく、非常に集中していた。球離れが良くきっちりパスをつないで攻めていく姿勢が徹底されており、無茶なディフェンスコントロールもしなかった。
立ち上がりスペインのチャビ(バルセロナ=スペイン)にフリーキックを決められ先制されたが、そのあとPKをカメルーンのGKカメニ(ル・アーブル=フランス)が止めた。カメルーンにとってこれは非常に大きかった。エムボマ(パルマ=イタリア)のシュートが相手DFに当たってゴールに入るようなツキもあった。
カメルーンの良さは、だれが出ても戦力が落ちないところだ。要所要所に欧州クラブで活躍する選手たちがおり、エムボマらオーバーエージの選手たちのバランスも良い。さらに、GKカメニら新星も活躍した。エムバミ(スダン=フランス)やエパル(パナハイキ=ギリシャ)ら控え選手だれが出てきても大丈夫だった。大会を勝ち進む中で、レベルを上げてきたチームだといえる。
ただ、今大会を通じて疑問だったのは審判の判定基準で、この決勝でもその問題が出た。個々の審判の判定基準はあってもよいが、今大会では審判が試合を作り過ぎていた。決勝でも、まずスペインのガブリ(バルセロナ=スペイン)が一発退場になった。それでも、前半に2点を取って以降攻め手のなかったスペインは、10人になればかえってFWホセマリ(ACミラン=イタリア)の1トップにして攻めの形を作れたはずだ。しかし、そのあとホセマリもゴール前で倒された際に、シミュレーション(PKを得るため倒されたふりをする反則行為)で2枚目のイエローカードを受けて退場になる。あれは審判をあざむいてPKを狙うような転び方ではない。FWだから倒されたことを多少はアピールするだろうが、イエローカードでなく、単なるファウルとしてゴールキックから再開で良かった。あの状況で、11人対9人というゲームを審判が作って良いのか。審判が安易にゲームを作ってしまったように思う。
カメルーンはその後、2人多いのでかえってボールを失いたくないという気持ちが選手の中で強くなったように思う。一方、スペインはよくがんばってカメルーンの攻撃をしのぎきった。
PK戦では、スペインのGKアランスビア(ビルバオ=スペイン)は左利きのキッカーに対しては自分から見て左、右利きのキッカーに対しては右に飛んだ。たぶん、キッカーの利き足で飛び方を決めていたのだろう。しかし、あのプレッシャーの中であれば、相手がけってから飛んでも1本は止められたのではないか。逆にカメルーンのGKカメニはそのような動きをせずに相手にプレッシャーをかけ、1本を外させた。このカメニは大会の最初の方では「ツキがあるな」と思っていたが、実力も備わった選手だということが分かった。
いずれにせよ、この試合は決勝戦にふさわしい内容となった。準々決勝でブラジルにVゴール勝ちして以来、神様がカメルーンの側についていたということだろう。
今回の五輪全般を通してみると、年齢制限のある五輪代表はフル代表に比べて90分間を通じての安定感には欠けるし、試合によって出来の良し悪しの差も大きい。一方で、何が起こるか分からないというサッカーの面白さが出た試合だったともいえる。
また、粗削りだが将来期待できる選手を発見できた大会でもあった。ホンジュラスのFWスアソ(カリアリ=イタリア)、カメルーンのGKカメニやFWエトー(レアル・マドリード=スペイン)ら、名前を挙げればきりがない。ワールドカップと五輪のレベルは本当に違うので、今大会で原石だと思われた選手がフル代表でレギュラーの座をつかめるかどうかに興味がある。
今大会の問題点としては、競技場の芝の問題が挙げられる。ピッチがもっと良ければ、選手もチームももっと良いパフォーマンスを出せただろう。アデレードのスタジアム以外は、どこもすべりやすい状態だった。決勝戦のシドニーのスタジアムでも選手はよくすべっていた。ガブリが退場になったケースでも、一度足をとられて遅れたのがきっかけ。その腹立たしさから足をかけてしまったという部分もあったのではないだろうか。ピッチに関しては、選手たちはかわいそうだったと思う。
一方、スタジアムの雰囲気はスポーツを楽しむ環境に満ちあふれており好感が持てた。サッカー以外の色々な競技もテレビなどで見たが、これまでなかなか出場機会のなかったような国をどんどん盛りたてていこうという五輪の原点ともいえる精神が感じられた。観客席と選手との一体感もあり、五輪の良さがうらやましくさえ感じられた大会だった。 |