 | | 日本陸上競技連盟強化副委員長・宮川千秋氏 |
宮川千秋・日本陸上競技連盟強化副委員長 女子400メートルの金メダルは聖火台に点火した最終聖火ランナーのキャシー・フリーマン(オーストラリア)だった。恐らく聖火ランナーの大役以上に全精力を傾注したのだろう。記録はさておき、金メダルを狙った勝ちに行く走りだった。前半をセーブして、後半ランナー全員が苦労するラスト50メートルを冷静に走ってこれまでの総決算を出した感じだ。記録を狙うとかえってレースに勝てないことがある。この走りには単純に競争ではなくいろいろ精神的な経験の蓄積によるタフさを感じた。先住民族の誇りやその人生が伝わってきた。
男子400メートルの金メダリストはやはりマイケル・ジョンソン(米国)だった。彼の走りには余裕がある。自分のペースで戦えることが見えているレースだったし、アトランタ五輪でのプレッシャーを感じながらの走りとは異なり楽しんでいたように思う。ハリソン・アルヴィン(米国)の肉薄を期待したが、彼はマイケルよりもインコースを走った。これが敗因だろう。アウトコースならマイケルの動きは見えないし300メートル付近でマイケルの前を走っていたかもしれない。ただインコースだったのでマイケルの動きが見えてしまい、消極的に抑えたレースをしてしまった。今回のレースはマイケルの思い通りの展開だったろう。
金沢イボンヌ(佐田建設)は女子100メートル障害2次予選で、準決勝進出を決めた。言葉が悪いが「拾われた」感じがする。12秒台の日本記録を期待したが、準決勝に持ち越されたので、チャンスを生かして欲しい。ラウンドを重ねれば重ねるほど記録は伸びる可能性がある。2次予選の記録は13秒11なので、条件さえそろえば12秒台の可能性は高い。25日は気温が低かったので条件が良くなかった。1―2度の差で状況は変わるものだ。金沢の場合、前半は遅れるが後半は持ち味が出てくる。ハードルのリズムはトップ選手とひけを取らないし、米国で練習しているのが強みだ。米国には金沢の記録を持つ選手が少なくないし、そういう環境の下で練習しているので、悪くても12秒99を超える記録は90%以上の確率で達成する。準決勝から決勝に進むことは正直なところ厳しい。決勝進出よりも五輪で12秒台を狙って欲しい。
男子100メートル障害決勝は新旧世代交代を強く印象づけるレースだった。金メダルはアニエル・ガルシア(キューバ)。有力と見られたアレン・ジョンソン(米国)は4位、コリン・ジャクソン(英国)は5位だった。この種目は世界レベルになるまで年季がかかるが、若い世代が台頭し始めたことを実感した。
27日の見どころはまず男子200メートルの伊東浩司(富士通)。練習は100メートルに絞っているので、簡単に200メートルが良くなるとは言えない。決勝進出して欲しいが、懸念材料は100メートル出場をやめてこの種目に絞っている強豪が少なくないことだ。ある面で伊藤の決勝進出は難しいと言える。1次予選では20秒40―50のタイムを出せばそれなりに戦える。2次予選では20秒30を出せば準決勝に進める。これは100メートルの結果から見ての可能性だ。
女子1万メートル予選の弘山晴美(資生堂)、川上優子(宮崎沖電気)は問題ない。高橋千恵美(日本ケミコン)には疑問符が付く。女子走り幅跳びではマリオン・ジョーンズ(米国)がいかに標準記録を突破するかに注目が集まる。初回で達成すればいいが3回までかかるようならば彼女の5冠はまずない。夫のドーピング疑惑は彼女にとってあまり影響がなさそうだ。(シドニーで26日未明、聞き手は遠藤繁) |