 | | 日本体育大学助教授、ロサンゼルス五輪金メダリスト・具志堅幸司氏 |
具志堅幸司・日本体育大学助教授・ロサンゼルス五輪金メダリスト 男子種目別決勝で鉄棒に出場した塚原直也(朝日生命)の落下は、難しい技の「コールマン」を試みたことによる。練習ではパーフェクトだっただけに成功してくれるものだとばかり思っていた。合宿のような五輪と違う環境なら完ぺきにコールマンを決める実力がある。重圧の中で成功できないのは精神面の問題だ。この落下が契機となって気が抜けてしまい、再度試みたコールマンでは2回目でひざが曲がってしまった。さらに着地では両手をついていた。
結果から見ると、彼は頭の中に一番高い表彰台に上る自分の姿を思い描いていないのではないかと感じる。優勝し、金メダルを取る自分の姿から逆算して練習するというイメージが塚原の中に恐らくないような気がする。本人と話をしていないので分からないが、これはとても大事なことである。
こうしたミスを防ぐためには、練習の中で観衆を集めて行う「試技会」を開くという方法がある。あるいは「心的負荷」をかけて、自分の頭で競技本番を想像して練習に取り組む。そこでは緊張しながら「これをやれば優勝だ」と考えながら練習する必要がある。塚原の今後の課題だ。
この種目の金メダリスト、ネモフ(ロシア)は4回の離れ技を決めてすごい。李(韓国)も高さのあるトカチェフを決めていた。このほか平行棒ではリが韓国初の金メダルを獲得できるほどの内容があったし、自分が審査員なら彼を上に上げた。裏を返せばそれほど横一線の内容だったということだろう。最下位のウルジカ(ルーマニア)は失敗があり、ムーンサルトも持ってこなかったので彼本来のものを出せていなかった。跳馬で4位にとどまったネモフ(ロシア)は今回、初めての失敗だった。一方金メダルのデフェル(スペイン)は点の高くなる技を入れた構成だったし着地の乱れも半歩で抑えられた。2本とも見事で、これはなかなか難しいことだ。
シドニー五輪を経て、今後日本はまず体操の新ルール発表に備えて情報を収集し早めの対応が欠かせない。そしてこの冬には新しいルールに合わせて技を作る必要がある。また着地に関する練習はより多く積むべきだ。本番の競技では0.05や0.1の減点が大きく響く。日ごろから緊張感を持って練習を重ねることだ。ロシアはきれいな体操を行う。ウクライナは今回ロシアを上回る成績で旧ソ連の体操を継承している。中国は高難度の技で攻めてきた。こうした国々と日本は技の面でも差があったと言わざるを得ない。
全体を見ていて感じたのは「何でこんなところで失敗するのか」「何でここで動いてしまうのか」ということ。大事なところで失敗している。メダルを取れないというのは惨敗だ。団体は健闘して4位だったが、メダルがなければ4位も6位も同じであり、その面では残念だった。(シドニーで25日夜、聞き手は遠藤繁)
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