 | | サッカー解説者・金田喜稔氏 |
サッカー解説者・金田喜稔氏 日本は準々決勝でPK戦で米国に敗れてしまったが、お互いにチャンスを作って良いゲームだったといえる。両チームともベストを尽くしており、PK負けという結果はしょうがない。確かに、前半終了直前の稲本潤一のシュートがクロスバーに当たるなど追加点を取れるチャンスはあった。一方、米国にもチャンスがあった。日本の力からいえばメダルを取れると思っていたが、サッカーでは何が起こるか分からない。
・課題は守備の際のバランス 今回の日本代表についていえば、予選リーグでまず2連勝したのが大きかった。勝ち点ではアトランタ大会と同じ6だが、予選リーグを突破できたのは最初に2連勝していたからだ。2戦で2点ずつ取って勝ち抜いたというのは、日本代表が進歩しているということだ。
日本の課題としては、守備の際のバランスが挙げられる。トルシエ監督の3バックシステムは完成しつつあるという印象だ。米国戦でも、整備された守備をしていたという印象を受けた。しかし、現在のシステムだと守備の際に両サイドの選手が大変だ。70メートルもの距離を走って出たり戻ったりしなければならず、他の選手とのバランスが悪い。疲れもたまるので、交代も含めて対策を考えないといけない。たとえば、ブラジル戦のときのように、流れが悪いときは右サイドの酒井友之が後ろにひいて4バック気味にするなど、システムの柔軟な変更が今後の課題だ。
・2002年W杯へ向け協会は良い準備を
また、予選リーグ3戦目前半のブラジルや、対戦はできなかったがスペインやイタリアのようにボールを持った選手に対するプレッシャーが厳しく、近い距離で守ってくるようなタイプのチームとあたったとき、カギとなるのはフィジカルの強さでなくボールを保持するテクニック、そして周囲の選手がサポートする距離だ。今回の五輪代表が本大会までの試合でそのような激しいプレーをされる経験をできたのは、直前のモロッコ戦の後半ぐらい。その意味で、本番までに良い準備ができているかどうかがいかに重要かが改めて分かった。日本サッカー協会は2002年のワールドカップに向け、良い試合設定をしてほしい。
日本は予選リーグを突破したが、日本では国中が「ベスト4はいける」と思っていたのではないだろうか。予選リーグ突破という快挙による日本サッカーへの期待感と、準々決勝でPK戦で負けたことによる落胆が混在した微妙な気分になっているかもしれない。これは、10月のアジアカップに向けて、良い意味でフル代表へのプレッシャーとなるだろう。アジアカップでフル代表がどれだけの力を見せてくれるか、良い形で次につながることを期待する。いずれにせよ、今回の日本五輪代表はよくやったと思う。
・ブラジル、ゲームメークできるボランチ不在
また、私はブラジル対カメルーン戦のテレビ中継を担当したが、ブラジルは国に帰れないのではないかというほどひどい負け方をした。カメルーンは後半に1人、延長に入ってからさらに1人が退場になり2人少ない状態だったが、それでもブラジルは攻めることができなかった。カメルーンはイチかバチかでオフサイドトラップをしかけてきたが、ブラジルのFWはそれに全部引っかかっていた。
ブラジルの問題点は、今回のチームにドゥンガ(元ブラジル代表、元ジュビロ磐田)のような選手がいないことだ。つまり、ゲームメークをできるボランチがいないため、良い守備をしてボールを奪っても、そこから良い攻撃につながらない。近年のブラジルをみていると、世界のサッカー界の潮流と同様にフィジカルを重視しているが、フィジカル的能力の高い選手だけを集めても難しい。最低のブラジルを見たという印象だ。
カメルーン、欧州クラブ組と若手が融合
一方のカメルーンは、ジェレミ(レアル・マドリード=スペイン)、ウォメ(ボローニャ=イタリア)ら欧州のクラブチームで活躍する選手を見ると、試合の流れの中でシステムを柔軟に変えられる能力が培われてきていると感じた。ゴールを決めたのもエムボマ(パルマ=イタリア、元ガンバ大阪)だ。さらに、ブラジルの前半の攻勢をことごとく防いだのは16歳のGKカメニ(ル・アーブル=フランス)。Vゴールを決めたのは17歳のFWエムバミ(スダン=フランス)だ。組織力こそないものの、欧州リーグでもまれたオーバーエージの選手と16、17歳の若手選手がともに活躍した。アフリカの潜在的パワーを現地で見てつくづく思い知らされた。一方のブラジルには、エムボマのような図抜けた選手がいなかった。 |