 | | 全日本柔道連盟強化副委員長・上村春樹氏 |
上村春樹・全日本柔道連盟強化副委員長 男子100キロ超級の篠原信一(旭化成)は決勝で、内またすかしで完全に一本を取ったと思っていた。ガッツポーズも見せ、対戦相手のドイエの方も納得していたがまずい審判の裁定で銀メダルになってしまった。場内に掲げられた大ビジョンでは何度も篠原の内またすかしを写していたのに、審判は篠原が投げられたと判定した。本当に残念なことで、日本は強く抗議した。ただ五輪では場内にいた3人の審判が下したものは覆らないというルールがあるが後味の悪い結果だ。
篠原は内またを狙って攻めていた。だから相手を有効とする判定にはいつまでも分からない気分だったろう。ドイエもなかなかの選手で、アトランタ五輪で金メダルを獲得しパリの世界選手権後交通事故に遭い再起不能とまで言われた。その彼がバーミンガムには出ずにシドニー五輪に合わせて決勝まで上がってきたことはほめるべきことだ。
篠原は1回戦からがちがちになっていて肩に力が入っていた。本来はもっと強いはずで、やはり五輪で緊張したようだ。思うように試合ができていないが、そういう状態でも最後は一本で相手をしとめていた。ただ厳しいことを言えば審判が誤った判定をするのはよくあることで、自分にも経験がある。気持ちの切り替えが必要で、競り合って勝っていくのが大切だ。審判のミスはミスでも切り替えていたら金は確実に届いたと思う。世界の王者に対しては背負い投げされたくないので、相手はなかなかつかませてくれないもの。そこを確実に取るためにはもうワンランク成長する必要がある。もっと自信も持って欲しい。
篠原はもっと競り合うための技の幅を広げて欲しい。足の技が今回は少ない。大きな技に頼りすぎた傾向がある。足の技で相手を崩していって丁寧に攻めていく手順を踏める選手になって欲しい。決勝では汗をかき疲れも見せたが、疲れない方がおかしい。篠原は頑張った。そして審判のまずい判定が金メダルを阻止した。
今回の篠原の試合をいい機会にして、審判の裁定が誤っている時に覆せない現状を改めるため正式に抗議を求めていきたい。どういう形になるかは今後決めたい。今回の審判の判定は投げた方を負けにして本当にお粗末。これは悪いのではない、お粗末だ。直すべきことをなおしていかないと柔道の発展を阻害しかねない。
女子78キロ超級の山下まゆみ(大阪府警)はよくやった。国内では3番手にとどまっていた山下にとって初挑戦となる大舞台。初戦から最後の最後まで一本を取る勢いでよく戦った。持っている力を100%出し切っていたし、これは実は難しいことだ。実力通りの試合結果だったと思う。まだ世界には強豪がいるので基礎体力を上げていくべきだ。切れる技や連続技を身に付ける必要もある。
シドニー五輪の柔道の全日程を終えて、はじめは「金メダルを男女合わせて3つ取りたい、4つ取ったらよい、5つなら合格だ」と考えていたことを思えば、結果は満足しない。ただ納得せざるを得ない。世界が強くなってきている。今大会から分かることは「きちんと組んで一本を取る選手は勝ち抜いていく」ということ。過去の世界チャンピオンでもメダルを取れない場合が少なくない。吉田秀彦、阿武教子、前田桂子は良い時には力を発揮できても、環境が整わないとメダルに手が届かない。そういう状態ではひ弱すぎる。調子が悪いときは悪いなりにでもベストの戦いをするという精神面の強化が必要だ。1本を決める技を徹底し、たくましい選手作りが欠かせない。その中で、滝本誠はきちんと組んだ柔道ができている。井上康生、田村亮子、野村忠宏は強烈な1本を取る選手だ。田村は国民の大きな期待を受け、プレッシャーをはねのけてたくましくなっている。もっときめ細かく練習を積めばいい選手が育っていくと考えている。(シドニーで22日深夜、聞き手は遠藤繁)
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