 | | 全日本柔道連盟強化副委員長・上村春樹氏 |
上村春樹・全日本柔道連盟強化副委員長 男子81キロ級の滝本誠(日本中央競馬会)は非常に良くやってくれた。今まで知る中で最高の試合をしてくれたし、見たことのない一面を見せてくれた。それはしぶとさとあきらめずに相手と組み合うこと、技のタイミングの良さ、相手をけん制し逆に大技をしかけることなど。そして滝本自身の気持ちの成長を知ることが出来た。「技を出したい」とは本人も言っていたが、気負いや躊躇(ちゅうちょ)があるとこれは決められない。まして五輪では簡単にできるものではないし、技術以前に気持ちの問題で成否が決まるものだ。
そういう面で滝本は波のある選手だったが相手をよく見て戦っていたし満点の出来だ。今後は今回のことをきちんと続ける気持ちを持つこと、そして今回手にした財産を毎回続ける選手になってもらいたい。これまではしつこい攻めなどに嫌気がさしてあきらめたりしていた面があったが、19日は淡々とこなして、相手が左なら右から、逆に右なら左から持ってくるという手順を正確にこなしていた。
厳しい階級と言われる中、滝本は元来から技の切れがある選手だった。出発直前の東京での合宿内容が実は良くなかったので心配したが、シドニーで見ると見違えるほどに変わっていた。だから個人的には「過去の実績を除けば滝本が1番いい」と考えていた。環境の変化で気持ちの切り替えが出来たのかもしれない。平常心で気負いも感じられず、自分の柔道をきちんと組んでいく様子がうかがえた。
前田桂子(筑波大)は悪くてもメダル、と考えていたが、経験や自身がまだまだ出来ていない成長過程のチャンピオンだったということだ。一本を取る力は持っているし、初戦での相手だって自信があったはず。組み合わせも今回良くなかったので、初戦の間も次の相手のことを考えてしまった不安もあったのだろう。
初戦は相手の技が右ひざに入ってパニックを起こした。いつもの前田とは違う様子だったし、技ありを取り返したときはすでに遅かった。実はアジア大会や福岡国際で前田は負けている。今回は初戦敗退という大きな代償を払って大きなものを得た。自分に厳しさを課す強さや、自分になじんだパターンではない技や攻めを覚えていくことなどが必要だと気付いたのではないか。これまでは一本勝ちを多く決めたシンデレラガールだったが、これは前田にとって戦いやすい状況が整った最高条件の時になる。今の攻め方は相手に研究されてしまうと通用しなくなる。相手を追い込み自分のチャンスを作るタイプにならなければならない。まだこれから伸びる素材。アテネ五輪で金メダルを狙うにはこうした試みが欠かせない。
20日は男子90キロ級に吉田秀彦が出場する。31歳のベテランが持つ技は皆が知っている中でどのように戦うか。経験があるので相手の対処方法はよく分かるはず。問題はスタミナだ。全盛期ほどはもう持っていないし1回戦で左の選手と当たるので体力を消耗するはずだ。この出来いかんで形勢は決まる。上野雅恵(住友海上)は女子70キロ級に出場する。攻撃力に課題があるが自分のスタイルでいけば面白い試合をしてくれそうだ。
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