 | | 日本水泳連盟競泳委員、武蔵野音楽大学講師・野口智博氏 |
野口智博・日本水泳連盟競泳委員・武蔵野音楽大学講師 女子100メートル背泳準決勝の中村真衣(中央大)は予選でいい泳ぎを見せていたことに比べて、前半の入りが悪かった。今回、自己ベストを出して中村の持つ日本記録を上回った選手もいる。準決勝の泳ぎで気が付いたのは、ターン直後の浮き上がり始めで、普段よりも早く水をかき始めたのが気になった。手を振り上げた時、自分が思った以上に体が深いとその分だけ水の抵抗を受けることになる。その影響がタイムにも出ているような気がする。この点は明日18日のレース前のウオーミングアップで確認すればよい。
関係者の話によれば、中村本人はまだ緊張していると言っているようだ。入場時の表情を見ても緊張を感じる。1分00秒70を出したダイアナ・モカヌ(ルーマニア)のことを特別気にしているようだが、自分のペースで逃げていけばいい。十分な調整を経て自己ベストを出せば相手に勝てる。中村は1分00秒50あたりを目指していると思うので、どのくらいタイムを出せるか注目したい。
同じ種目に出ている稲田法子(早大)は今回、不調を吹っ切るレースができたように思う。中村についていく格好ではオーバーペースの泳ぎになってしまうので、体半分くらい差が付けられる程度の開きを維持して、後半の強さを出し切ればいい。決勝は同じ日本の代表でも中村と稲田はライバルになる。稲田のコーチも作戦を立てているはずだ。
女子100メートル平泳ぎの田中雅美だが、準決勝での泳ぎは大きな泳ぎを意識する余り、テンポを上げることも忘れてはならない。後半は伸びてきたが、現在の状況でメダル獲得は厳しい。今出来る範囲で競技に臨むべきで、レースに集中するべきだ。ポイントは前半の泳ぎ。大きな泳ぎをしようと気にせず、ある程度のレースで入ることが大切だ。田中が日本記録を更新すれば次の種目となる200メートルへの気持ちが変わる。
世界記録保持者のヘインズ(南アフリカ)は準決勝までの泳ぎを見て、力を出さないように温存している気がする。ただポウ(南ア)の方が調子は良く、2人の駆け引きにも注目したい。ここにクアン(米国)やコバチ(ハンガリー)などがもつれて表彰台争いは激しいものになるだろう。新記録を期待できるレースになると見ている。
男子400メートル個人メドレー決勝に出場した谷口晋矢(中央大)は周囲のペースに巻き込まれた感じだ。特に力んでいた様子ではなかったので、五輪独特の流れの中でもつれたのかもしれない。午前の疲労が残っていたのだろう、平泳ぎでペースが落ちてしまったため自由形で巻き返すこともできなかった。女子100メートルバタフライ決勝の大西順子(ミキハウス)は本来のスピードを出せていなかった。58秒台を出すつもりだったのだろうし残念そうだった。もう少し頑張って欲しい。
男子100メートル平泳ぎ決勝の北島康介(本郷高)は残念なレース展開だった。世界記録保持者よりも先に出る泳ぎをして、あきらめず4番についたという内容は本人の財産になる。2位や3位もあり得るという見せ場を作ったことは大きいし、胸を張って日本に帰国できる成績だ。ただ決勝に出ている選手を見比べると体形がまだ一回り細い。現在の完成度なら次の五輪まで期待が持てる存在だ。
シドニー五輪はイタリアやルーマニアが強い。ただ米国やオーストラリアは狙った通りの結果がすべて出ているとは限らない。競泳3日目となる18日は萩原智子が女子200メートル個人メドレー、山本貴司が男子200メートルバタフライに出場する。この選手たちがどのくらいの位置でレースを進めるか、が後半戦への日本チームの雰囲気を決める。中村や稲田はぜひ表彰台に残って欲しい。(シドニーで、聞き手は遠藤繁)
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