NIKKEI NET
シドニー五輪2000
最新ニュース
競技別
解説者の目
五輪ビジネス
豪SMH紙から
連載・コラム
from シドニー支局
競技日程
選手紹介
競技会場
フォトギャラリー
国別メダル数
みどころ・コラム
市民が支え、成功導く・世論調査、7割が評価
 「傷ついた五輪がシドニーで生き返った。救済したのはIOC(国際オリンピック委員会)でもない一般の人々。“ピープルズ・ゲーム”と今大会を呼びたい」。五輪学が専門のニューサウスウェールズ大学のリチャード・キャッシュマン助教授(60)はこう総括した。

 シドニー大会を前に、2002年ソルトレーク冬季大会を巡る招致疑惑で揺れた五輪だが、大会の最終的なチケット販売率は約9割となり過去最高を更新。4万人を超えるボランティアが大会を支え、「スポーツ大好き」のお国柄もあって観客は地元選手のみならず、すべての選手に温かい声援を送り、大会を成功に導いた。

 迫害の歴史を持つ先住民アボリジニの問題も大会のキーワードとなった。開会式の最終点火者をアボリジニのキャシー・フリーマン選手が務め、そのフリーマン選手が女子陸上400メートルに優勝し、11万人を超える観客に祝福されながらアボリジニの旗を持ってビクトリーランをした。

 29年前にアボリジニの誇りの回復と地位向上の願いを込めて旗をデザインしたハロルド・トーマスさん(53)は「キャシーは豪州という多民族国家を一つにまとめ、アボリジニだけでなく豪州全体のシンボルとなった」と話す。

 そして、IOC主導によって実現した韓国と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の合同行進。地元有力紙シドニー・モーニング・ヘラルド編集長のグレッグ・ハイウッドさん(46)も「(大会で)最も印象的だった」と振り返る。

 心配されたテロ攻撃もなく、輸送問題でも、ソフトボールの選手の会場到着が遅れるなどの不手際はあったものの、大きな混乱はなかった。地元世論調査でも、五輪組織委員会の仕事ぶりを評価する市民が7割を超えたという。

 スポンサー収入が過去最高となるなど商業化による五輪の肥大化は変わらなかったが、「五輪を支えるのは市民」という原点を再認識させるとともに、「民族の融和と和解」という五輪でタブー視されていた政治的メッセージを発信、21世紀の五輪の姿を予感させる大会となった。(シドニー=大石信行)

Copyright 2000 Nihon Keizai Shimbun, Inc., all rights reserved.