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変わるIOC、信頼回復へ政治的活動・祭典の素顔、直前報告(4)
シドニーでの戦没五輪選手の慰霊祭であいさつするサマランチIOC会長=写真 剣持常幸
 20年余にわたって国際オリンピック委員会(IOC)に君臨したサマランチ会長は、来年7月に勇退する。トップとして迎える最後の五輪を目前に控えた10日。シドニー湾に臨むオペラハウスで開かれたIOC総会開会式で、80歳になった老会長は誇らしげに壇上に立った。

 演説の最後に「重要な発表があります」と、とっておきのニュースを披露。「韓国と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の五輪委が、互いの選手団が合同行進することで合意しました」

 15日の五輪開会式で南北朝鮮が統一旗を先頭に、同じユニホームで同時に入場行進する。同会長の提案を両国が受け入れた。これでシドニー五輪は、国際政治においても歴史的意義を持つ大会となった。

 今回ほどIOCの政治的活動が目立つ五輪は過去にない。南北朝鮮だけでなく、独立への過程にある東ティモールには国連の支援も受けて選手の個人資格による参加の道を開いた。サマランチ体制以前に、政治の介入を忌み嫌った時代があるのがうそのようだ。

 招致スキャンダルで失墜したIOCと五輪の国際的信頼をどう取り戻すか。政治的な動きは、このテーマと無関係ではないだろう。委員たちは世界から厳しい視線が注がれていることを意識している。

 4日夜に現地入りしたサマランチ会長は到着後、これまでの豪華リムジンではなく、バンで移動。ぜいたく自粛を誇示するかのような行動に、地元メディアも激しかった一時期のバッシングを控えている。

 同時に、組織の内部には不祥事を過去のものとして葬り去ろうとする雰囲気さえある。委員の任期制や五輪候補都市への訪問禁止などを打ち出したことで、「我々は構造改革を断行したのだ。パーティーを地味にするとか、表面的な変化を示す必要はもうない」と広報担当者は言い切った。

 「ポスト・サマランチ」を巡る動きもあわただしくなっている。後継候補として色気十分の面々にも国際政治とのかかわりが目立つ。金雲竜理事(韓国)は南北朝鮮の合同行進に尽力。ゴスパー副会長(オーストラリア)は東ティモールの選手参加に一役買ったと言われ、同地域選手のシドニー入りにあたり空港まで出迎えた。

 行き詰まりつつある商業主義と、その一方で加速する政治との関係。“絶対君主”の退陣後、新世紀の五輪はどこに向かうのだろう。(シドニー=岩本一典)

[2000年9月13日/日本経済新聞 朝刊]

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