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豪メダル作戦、強化の反動で荒れた選考・祭典の素顔、直前報告(2)
金メダル記念切手の見本を手にするオーストラリア郵便局の職員=写真 剣持常幸
 「写真を撮ってから3時間で印刷ができるのよ」。国営オーストラリア・ポストのクリスティーヌ・クロンプトン部長は笑った。オーストラリアの選手が優勝すると、翌日正午に金メダル記念切手を売り出すプロジェクトを担当している。

 デザイナー4人、印刷担当は各州4人ずつで、五輪期間中は連日徹夜の勤務だ。「大変だけど、たくさん発行したい。でも選手のプレッシャーになるから、数の希望は言わないでおきましょう」。地元のメダルラッシュに備え、準備に余念がない。

 金メダル20個――。オーストラリア五輪委員会(AOC)の目標だ。4年がかりで取り組んだ「2000ゴールドプラン」は、金20個を含むメダル60個を掲げている。

 報奨金は金メダリスト1人に1万5000豪ドル(約90万円)、銀7500豪ドル(約45万円)、銅5000ドル(約30万円)。実は金メダル切手もその報奨システムの一環。選手には肖像権代として2万ドル(約120万円)が支払われる。一風変わったニンジン作戦だ。

 南オーストラリア州立大スポーツ科学部のケビン・ノートン助教授は金メダル数を14個と予測。1980-96年の五輪五大会に向けて豪州政府がスポーツに投じた強化補助金とメダル数の関係を分析した。

 金メダル1個のコストを3700万豪ドル(約22億円)と試算。アトランタ五輪後の4年間で使われた強化費から計算すると、金メダルは14個獲得できるはずという。モスクワからアトランタの五大会でオーストラリアの金メダルは計25個だったから、シドニー向けの強化費がいかに巨額だったかがわかる。

 これもかつてないお金をつぎ込んだ強化の反動というべきか。各競技の層が厚くなると、今度は選手選考への不満が噴出、17競技で50選手以上が異議を申し立てた。日本で競泳女子の千葉すずが初めて訴えたスポーツ仲裁裁判所(CAS)への訴えが14件に達し、柔道女子52キロ級のサリバンは“勝訴”で逆転代表入りを果たした。

 今大会から採用され、メダル有望なトライアスロン女子も9月に入ってCASの裁定が下り、開幕目前で代表選手が確定する異常事態。「五輪に出るかどうか。また、出ても成績次第で補助金の額は大違い。なんとしても金メダルが欲しい」。選手は必死なのだ、とオーストラリアではなおマイナー競技の野球コーチが話してくれた。(串田孝義)

[2000年9月10日/日本経済新聞 朝刊]

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