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ドーピング、血液検査で乱用歯止め・祭典の素顔、直前報告(1)
EPO検査が導入されたオーストラリア・スポーツ薬物検査所=写真 鈴木健
 シドニー五輪開幕まで1週間を切った。シドニー市街は五輪マークがあちこちに躍り、世界各地から選手も集まりつつある。華やかさと臨戦ムードを交錯させながら、秒読みに入ったミレニアム五輪の開幕直前の相貌(そうぼう)を紹介したい。

 エリスロポエチン(EPO)。シドニー五輪から血液検査を導入、初めて検出可能になった禁止薬物が開幕前の五輪を揺らしている。大会中の摘発を恐れた中国オリンピック委員会は先手を打ち、疑いのある選手の派遣を取りやめる挙に出た。

 EPOは体内に酸素を運ぶ赤血球を増やし、持久力を高める。体内にもともとあるホルモンであるため、人工物質と区別がつきにくい。自転車、陸上長距離などで乱用がうわさされながら、ずっと野放しだった。

 3日から、シドニー入りした選手に抜き打ち検査を行ってきた。採取した検体は46。IOCのシャマシュ医事部長は8日の理事会で現時点では陽性反応を示した選手がいないと報告した。晴れの舞台を目前に追放される選手が出るのか、なお予断を許さない。

 建物のゲートにはすべて電子錠。シドニー北郊にあるオーストラリア・スポーツ薬物検査所の奥に新しく設けた2つの部屋がある。ここにEPOの分析機器が並ぶ。EPO検査導入決定は8月末とぎりぎりだったが、ニューサウスウェールズ州が予算を確保して態勢を整えた。

 血液による検査法の開発に携わったグラハム・トラウト博士は「血液と尿の両検査を組み合わせる方式はとても手堅い。いずれも1万分の1ほどしか間違える確率はないが、2つを掛けると限りなくゼロに近づく」と判定に自信をみせる。数時間で判明する血液検査で陽性となった場合のみ、3日かかる尿検査結果と照合、ともに陽性なら違反となる。大会期間中は24時間態勢で作業する。

 ドーピング(禁止薬物使用)摘発を推進する半面、シドニーはかつてドーピングで出場停止を受けた選手が次々と復帰する大会でもある。男子走り幅跳びのソトマヨル(キューバ)は、コカイン陽性で出場停止2年の処分が1年に短縮され出場する。女子短距離のオッティ(ジャマイカ)、男子長距離のバウマン(ドイツ)もしかり。スターに甘い国際陸連の決定は、見せ物としての五輪の興行価値を念頭に置いたものと、受け止められても仕方ない。

 IOCのサマランチ会長は血液検査によって既に、疑惑選手の五輪出場を防ぐ抑止効果が顕著に表れている、と評価する。だが、空港では選手の薬物所持が相次いで発覚、スポーツ界に巣くうドーピング問題の根深さが改めて露見している。(串田孝義)

[2000年9月9日/日本経済新聞 朝刊]

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