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(中)五輪で勝つ精神 体操・具志堅幸司さん
男子体操個人総合で優勝を決めガッツポーズをする具志堅幸司さん(1984年のロサンゼルス五輪)
 前回のアトランタ大会ではメダル獲得ゼロ、団体で10位と、期待を裏切る結果に終わった男子体操。しかし、今回は「スーパーE」の難度の技を持つ塚原直也を筆頭に個人戦、団体戦を通じてのメダル奪回に期待がかかる。84年のロサンゼルス大会で個人総合とつり輪の2つの金メダルをはじめとして種目別で銀1つと銅1つ、団体総合でも銅メダルを獲得した具志堅幸司さん(現在は日本体育大学助教授)に、五輪で結果を残すための秘けつを聞いた。(聞き手はマルチメディア編成部 斉藤直宏)

・自己負担してでも出たかったモスクワ

 五輪は4年に1度しかないという特別な大会だ。しかも、私の場合は80年のモスクワ大会の代表として出場するはずだった。しかし、当時の国際政治状況の中で日本は出場しないことになってしまった。私自身としては、自己負担をしてでも出場をしたかった。モスクワに出られないとなれば、残されたのは次のロサンゼルス大会だけ。そしてロス五輪が、私にとって最初で最後の五輪となった。

現在は日本体育大学助教授を務め、後進の指導にあたっている具志堅さん
 そういう意味では五輪は確かに特別な大会ではあるが、体操そのものは変わるわけではない。五輪だろうが世界選手権だろうが国内の大会だろうが、変わるとすればそれは自分自身であり、体操自体は同じなのだ。五輪だからといって区別するのはおかしい。私は1回1回の大会を大事にしてきた。違うのは、周囲だけ。国内の大会だと報道されず、五輪だと大きく報道されるというだけで、実際にやっている本人の心は同じだ。

 ふだんからそのように体操という競技をとらえていたから、五輪でも同じ気持ちになれたのだと思う。五輪という場でいきなり、そうした考え方をするのは無理だろう。長い年月の中で体操というものを見つめてきて、「五輪のような大舞台だからといって変わってしまうのは自分自身であり、体操そのものは変わらない」と思うことができた。大きな大会だろうが国内の小規模な大会だろうが「いつもと変わらない体操を、手を抜くことなくやろう」という気持ちを持ち続けてきたが、五輪でもそれは変わらなかった。

・重要なのは開き直りと明るさ

個人総合で金メダルを獲得、表彰台で観衆に応える具志堅さん(84年、ロサンゼルス五輪)
 しかし、五輪となると選手には過大な期待がかかり、過剰な報道もなされる。だから、それを逆手にとって「もっと騒げ」と開き直るぐらいの積極的な気持ちや、期待も報道も何でも受け入れていく余裕が必要だ。そのような気持ちで本大会に臨んだことが、良い結果につながったと思う。

 もう一つ重要なのは「明るさ」だ。試合のときに気持ちを頂点にもっていくためには、この明るさというものが必要だ。最後の勝負を打つとき、明るさをもって臨めばリラックスでき、攻めていく気持ちになれる。「もうだめだ」などというような否定的なことは言ってはいけない。そのような気持ちで大会に臨んだことが、すべてがプラスの方向に働いたのだろう。

 今回の代表選手たちは、仕上がりもよいので気分的にものっていけるのではないだろうか。過大な期待や過剰報道など、さまざまな「雑音」が入ってくるとは思うが、それを「いやだ」と思うとプレッシャーになってしまう。開き直るぐらいの気持ちで大会に臨んでほしい。

[9月11日]

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