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中村俊輔(サッカー)、中田英が司令塔“禅譲”・スタンバイOK、日本のエース
五輪に「自分よりうまいやつに会いに行く」という中村=右端(6月のフランス戦)〔著作権:AP.2000〕
 今月2日、クウェートとのシドニー五輪壮行試合。左サイドにいた中村俊輔(横浜)は後半から中央へ配置を変えた。続く5日のモロッコ戦は最初から中央に居座った。前半は中田英と2列目で窮屈そうに並んだが、後半は中田英に「おれが前に行く」と席を譲られた。試合後、「やっとここまで来た。(五輪に)間に合った」と、しみじみ語ったのには訳がある。

 中村は、優雅にゲームを組み立てる2列目のこの位置こそ、自分の場所と考える。だが、同世代のこのポジションにいるのは中田英寿(ローマ)、小野伸二(浦和)と達者ぞろい。五輪代表チームが立ち上がってから2年間、居場所を確保する戦いに明け暮れた。

 左サイドでの起用のメドが立つと、トルシエ監督は「お前、左でいいんだろ?」とつれない態度。「はあ」と生返事を返してはもんもんと悩む日々。「中央の位置にこだわり続けたい」と新聞、雑誌上で言い続けたのは、口下手な中村流の、監督への遠回しなメッセージだったのか。

 トップスピン、バックスピンを自在に使い分ける左足。ハエ取り紙のようにボールが足に吸い付くドリブル。腰のひねりを利かせてボールをどろんと落とすFK。五輪目前の2つの壮行試合で、積み上げた技の数々を監督と仲間にきっちり見せた。

男子サッカー試合日程(9月)
▽予選リーグ
南アフリカ戦14日(木)
スロバキア戦17日(日)
ブラジル戦20日(水)
▽決勝トーナメント
準々決勝23日(土)
準決勝26日(火)
3位決定戦29日(金)
決 勝30日(土)
 とりわけ、中村が「勉強になった」と繰り返したのがモロッコ戦。「前半は僕が自由にやったけど、マークがきつくなった後半はヒデさん(中田英)に前で起点になってもらった。言葉のやりとりがあったわけじゃないのに、自然にできた」。中田英との理解も深まり、いい感触をシドニーへ持ち込める。

 中村は、名手たちのプレーを鏡に映すように吸収する。かつてマラドーナ(アルゼンチン)のビデオを繰り返し観賞した少年は、今もJリーグでストイコビッチ(名古屋)のプレーを盗んでいる。6月のモロッコ遠征で直接対戦したジダン(フランス)も模倣の対象だ。「メダルとか、あまり興味ない」という五輪の楽しみは、「自分よりうまいやつに会いに行くこと」。

 不安もある。「悩むと頭がおかしくなりそう。五輪は年齢制限のある大会だけど、フル代表のプレーをしないと駄目。下手をやったら代表からすぐサヨナラだから。怖いよね」

 屈託を抱えながら、シドニーへ。初戦は14日の南アフリカ戦。世界市場は、磨き上げた左足にどれほどの値札を付けるのか。(阿刀田寛)

[2000年9月7日/日本経済新聞 朝刊]

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