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木製バット、キューバ変容小技磨く・変わる五輪野球(中)
アトランタ五輪でキューバは打率4割以上を記録した(日本戦で2ランを放ちホームインするリナレス(中))=共同
 昨年7月31日、シドニー五輪米大陸予選(カナダ)での出来事だった。ドミニカ共和国の好投手に対し、アトランタ五輪で打率4割7分6厘をマークしたキューバの主砲・リナレスが、まさかの犠牲バントを敢行。試合を3―1で制した。

 かつて巨人・長嶋監督も「うちの4番に」と恋い焦がれたアマ球界最高の打者。その犠打に各国関係者は目を見張った。柴田穣・日本野球連盟国際事業企画課係長は「キューバのバントなんて見たことがない。野球が変わったのか」。

 キューバのパワー野球を支えてきたのは金属バットで「(球が飛びにくい)木製バットの採用で貧乏くじを引くのはキューバ」のはずだった。しかし、そんな見通しは、周到な「木製バット対策」の一端を示すリナレスの1打席で覆された。

 キューバも苦悩した。五輪にプロを受け入れるための木製バット採用に伴い、国内リーグも昨年、木製に切り替えた。とたんに本塁打の数が激減。アトランタ五輪で9本塁打をかっ飛ばしたキンデランさえ、90試合で9本にとどまった。

 昨年のインターコンチ杯のチーム打率は2割7分5厘で日本を下回った。ベストメンバーではなかったが、もはやアトランタ、バルセロナで4割以上を打ちまくった打線ではなかった。

 「木に苦しんでいる」とほくそえんだ日本・大田垣監督。だが、ここに来て評価の急転換を迫られることに。「大量点を取らなくても勝てる試合をしてくる」

 今ごろ気付いたかとキューバ側は高笑いだ。同国を2大会連続の金メダルに導き、151連勝をあげた英雄、フェンテス元監督は「パワーだけじゃなく頭も使う」。

過去2大会のキューバの打撃成績
(カッコ内は日本)
 試合数打 率本塁打安打数打 点
アトランタ9.40238141115
(9)(.336)(26)(109)(82)
バルセロナ9.4041713585
(9)(.316)(12)(92)(67)
 同氏によると、昨年2月に木製バットの練習を開始した。「金属では振り切るスイングを徹底したが、今は外角の球を素直に打ち返す打撃を繰り返している」という。もちろんバントやヒットエンドランの練習もぬかりない。「初回からのバントはうちのスタイルじゃないが、中盤以降なら当然の策。監督は細かいサインで忙しくなるよ」

 柴田氏は最近、不安にかられている。キューバは160キロ超の速球を誇るロドリゲスをはじめ好投手が目白押しだ。「あの投手陣は史上最強。となると金属バットを取り上げられて本当に困るのはこちらの方かも」。情報を集めるほどに、木の採用はキューバに追い風だったとの確信が強まるという。(奈良部光則)

 [2000年8月27日/日本経済新聞 朝刊]

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