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「速く泳ぐ技術」解析・メダルつかむ科学(2)
 日本水泳連盟の河合正治・競泳委員がビデオと連動したパソコン画面に映った選手の泳ぎを何点かペンでなぞると、たちまちグラフが現れた。縦軸が速度、横軸は時間。「1ストロークでの速度変動図です」

 日本の競泳は伝統的に泳ぎ込みを重視してきた。科学的手法を導入しても、運動生理学的な立場からどうすればスタミナやパワーのある体を作れるかと考える。それを変えたのが、バサロスタートを駆使した1988年ソウル五輪の鈴木大地の金メダル。「速く泳ぐには、それに適したテクニックがあるということです」と河合さん。

 それからフォームの研究が始まった。中心になったのは、ニコンの技術者である河合さん。現在、水連は日本選手権などの主要大会で、移動カメラと固定カメラ2台を設置し、選手の水中での動きをビデオ撮影している。ビデオをパソコンとつなぎ、画面上のポイントを指定していくだけで、泳ぎのスピード変化を表示するソフトも開発した。

 速度変動図からは、選手の特徴が浮き彫りになる。例えばメダル候補、萩原智子(山梨学院大)の背泳ぎ。一流選手はひとかきで2回強く水をかく。そのたびに速度が上がり、1ストロークで両腕計4回の速度アップがラクダのこぶのように現れるが、彼女の場合、左かきの2回目のこぶが緩やかになっている。「萩原はまだ左腕の使い方が下手。五輪後にこれを改善すると、さらに記録は伸びるでしょう」

 クロールでは、最新の流体解析プログラムを使って腕が水中で水をかく動きを調べた。普通は最短距離を通って強く水をかくほど速く泳げるよう感じる。しかし、速い選手はみんな腕をS字を描くように動かしている。水泳界では常識とされているのだが、日本のコーチはだれもその理由を説明できず、指導も徹底されていなかった。

 「進行方向に向かって45度までの角度で腕が動くなら、水中に伝わるパワーは変わらないと分かった。それなら、腕を蛇行させて水を長い時間かいたほうが速くなる」。源純夏(中大)はそこから泳法改造に取り組み、大幅に記録をアップさせた。

 分析した結果は、代表選手やコーチたちに伝えられる。河合さんは「五輪は各国の技術力の戦いの場」と考えている。(北川和徳)

[2000年8月9日/日本経済新聞 朝刊]

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