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大人のチーム自覚育つ・女子競泳、最強布陣の素顔(5)完
大会直前まで選手は独自調整を続ける
 「選手たちの意識が大きく違っているよ」。ソウル五輪の金メダリスト、鈴木大地を育て、シドニーが4大会連続の五輪となる鈴木陽二コーチはこう強調する。「アトランタの時は選ばれただけで満足する選手がいた。だが今回は五輪で勝負しようという思いが強いでしょう」

 4年前も「史上最強」と呼ばれた女子競泳チーム。しかし、田中雅美(中大)は「自己ベストを出してメダルが取れればいいとぼんやり思っていた」と振り返る。それがシドニーでは「勝つためにどういう泳ぎをするか、はっきりしたレースプランが頭の中にあります」と変わった。「メダルは狙って取るもの」(鈴木コーチ)という明確な動機づけが選手の間に浸透している。

 年齢層もアップした。25歳のベテラン、大西順子(ミキハウス)を筆頭に12人のメンバーは10人が大学生以上。アトランタは14人中10人が中高生だった。平均年齢も20歳を超え、2度目の五輪経験者も5人いる。

 「つきあっている人? いますよ。相談相手になるし、自分をしっかりもっていれば水泳に影響はありません」(田中雅美)「卒業後の進路は決まってません。就職しないといけないでしょうかね」(稲田法子)。時に私生活にも踏み込む報道陣の質問も、さらりと受け流すようになった。「神経質になっているコーチより、選手たちの方がよほどしっかりしていて大人だよ」とある水連関係者。

 4年前の惨敗は、序盤の成績不振に影響され、幼い選手たちが精神的に崩れたためと指摘されることがある。当時のリーダー格で競技2日目の女子200メートル自由形で予選落ちした千葉すず(イトマン)の「楽しめたから満足です」などの発言がそうしたムードを作ったとして、千葉を“戦犯”扱いした水連幹部がいた。しかし、本当の敗因は大会が始まる前にあった。

 アトランタに備えて日本チームは1カ月前から米国で合宿した。同世代の仲間との長い共同生活の中で、女子選手の間で、なぜかやせることがはやり、食事を抜くものまで出たという。本番にベストの体調で臨めるわけがない。結局、五輪選手としての自覚がない集団だったことが、総崩れの原因だったのだろう。

 今度はそんな心配はなさそうだ。「自分の体調管理を万全にして、レースへの集中力を維持できなければ五輪では勝てない」と田中は悟っている。

 シドニーに向けては、前回の反省もあって長期合宿をやめ、各選手は所属チームで大会直前まで調整する。9月16日の競泳競技の開始まで残り40日。最強布陣の女子競泳陣がメダルラッシュへ、ラストスパートをかける。=おわり

(この連載は磯貝守也が担当した)

[2000年8月7日/日本経済新聞 朝刊]

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