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萩原、成長続ける大器・女子競泳、最強布陣の素顔(3)
女子200メートル個人メドレー決勝で2分12秒84の日本新で優勝し声援にこたえる萩原智子
 欧米選手にも負けない177センチの長身。200メートル背泳ぎと個人メドレーのメダル候補の萩原智子(20、山梨学院大)は、気弱で甘えん坊な少女だった。

 小学生時代、試合が怖くて泣きだして棄権した。今もレース前には手のひらに「人」を書いてのみ込む、おまじないが欠かせない。素質に恵まれながらトップに躍り出たのが18歳と水泳界では遅咲きなのも、そのあたりが関係しているかもしれない。

 水泳を始めたのは小学1年の時、「海でおぼれたのがきっかけ」。姉と一緒に近所のスイミングクラブに通い始め、ずっと同じ環境で続けている。大学進学時には、地元の山梨・甲府を出ることも考えた。「家族やコーチに支えられ恵まれすぎていたので、一度は離れた方が自分のためになるかとも思った」。しかし、自分の「元気の源」と呼ぶ家族と離れる選択はしなかった。

 柔らかな身のこなしが、彼女の泳ぎの長所。水の抵抗を抑えるうえで重要な「全身のしなやかさを持つ」と日本水泳連盟の河合正治・競泳委員は指摘する。しなやかで長い手足が、世界一うまいと評されるターンで生きる。

 今年4月、五輪代表選考会の200メートル背泳ぎ。ターン手前5メートルからターン後10メートルまでのタイムを計測すると、萩原は3度のターンの計45メートルでライバル中尾美樹に1秒36もリードしている。それなのに、レースは0秒18差で中尾が制した。今季世界3位でありながら、まだ泳ぎは未完成、発展途上といわれるゆえんである。

 4年前、高校1年で迎えたアトランタ五輪の代表選考会でも背泳ぎの代表候補に名前は挙がっていた。だが100メートル5位、200メートル3位。「精神的に甘かった。練習が嫌いで、ウエートトレーニングはコーチのいないところで数をごまかしたりして。そんな状態で、五輪に出たいと言っていたのが恥ずかしい」

 1998年暮れのバンコク・アジア大会で、世界選手権のメダリストでもある中村真衣を破って100メートル、200メートルの二冠を達成。一躍、時の人となり、大みそかの紅白歌合戦で審査員まで務めた。

 昨年は200メートル個人メドレーで日本選手権に初挑戦。シドニーのメダル候補でもある田島寧子を破って初優勝した。強気で知られる1歳年下の第一人者に気を使い、視線を合わせないようにして、「専門外の私が優勝して申し訳ないです」と恐縮していた。

 しかし、2分12秒84の日本新記録で今年の代表選考会に勝ったときは「専門は背泳ぎですが、個人メドレーの萩原もみなさんに見てほしい」。気弱なシンデレラは、成長につれたくましさを備えつつある。

[2000年8月5日/日本経済新聞 朝刊]

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