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田中、科学で才能開花・女子競泳、最強布陣の素顔(4)
合宿でトレーニングに励む田中雅美
 バルセロナ五輪の金メダリスト、岩崎恭子は早熟な天才少女だったが、同じ平泳ぎの田中雅美(21、中大)は長い時間をかけて才能を開花させた。2人は同学年。引退した岩崎がテレビリポーターとして参加するシドニーで、今度は田中が金を狙う。

 東京・八王子市の中大水泳部プール。田中が腰に装着したワイヤに前から引っ張られて泳ぐ。この装置には女子平泳ぎ100メートル、200メートルの世界記録を持つヘインズ(南アフリカ)の泳ぎの速度、1ストロークで進む距離など様々なデータが入力されている。「神経を刺激し、筋肉に世界トップの泳ぎの感覚を覚え込ませるのが狙い」と高橋雄介ヘッドコーチは説明する。

 日本の五輪スイマーはほとんどスイミングクラブ育ち。だが、田中は故郷の北海道・岩見沢のクラブで才能を見いだされて単身上京した高校時代から、中大水泳部で男子部員に交じって練習を積んできた。

 米国・アラバマ州立大で学んだ高橋コーチが中心の練習は、科学的手法を導入した日本では画期的なものとされる。3年前に進学して正式に最初の女子部員となった田中に続き、翌年には背泳ぎの中村真衣、自由形の源純夏らも入部。今では「大人のチーム」女子競泳の中心勢力である。

 田中は高校3年の時、アトランタ五輪に出場。プールサイドで寝転んでイメージトレーニングするなどの中大独自の練習の効果か、雰囲気にのまれて自滅する日本選手が続出したこの大会で唯一、100メートル、200メートルの2種目でともに自己ベストをマークした。

 とはいえ、100メートルは決勝に進めず、200メートルも3位から1秒以上も離された5位。その差を綿密な計画に基づいて縮めようとしたのがこの4年間だった。

 「彼女がさらに上を目指そうとするなら、泳ぎを変えないといけなかった」と高橋コーチ。アトランタと同様の成績に終わった1998年1月の世界選手権の後、田中は泳法の改造に取り組む。1ストロークで進む距離の長い大きな泳ぎに変えた。

 平泳ぎはかけばかくほど速くなるわけではない。足を引きつけてキックする直前、一瞬前進が止まる。田中の場合、それは1ストロークで0秒12。ストローク数が増えるほどタイムロスも大きくなる。必死にかくほど、遅くなってしまうケースもあるのだ。

 昨年の日本選手権100メートルのストロークは56、今年4月の選考会は51。0秒60のロスを抑えた計算になる。これに泳ぎのスピードアップも加わり大幅な記録の短縮に成功。彼女が選考会で出した100メートル、200メートルの日本記録は、ここまで今季世界1位にランクされる。

 目指した大きな泳ぎはライバルとなるヘインズの最大の武器でもある。ワイヤで体感した「仮想ヘインズ」に五輪本番で追いつけば、世界記録と一緒に金メダルも手に入る。

[2000年8月6日/日本経済新聞 朝刊]

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