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稲田、“大地譲り”の技術で勝負・女子競泳、最強布陣の素顔(2)
6月のミッションビエホ国際水泳女子200背泳ぎで2位に入った稲田〔共同〕
 100メートル背泳ぎの稲田法子(22、早大)は、1992年のバルセロナ五輪で、女子200メートル平泳ぎ金メダリスト、岩崎恭子らと「中2トリオ」ともてはやされた。しかし、4年前のアトランタには出場していない。

 96年4月の五輪代表選考会。本番でメダルも狙える100メートルの第一人者として臨んだが、自己ベストより1秒も遅れ、同じ高校3年で200メートルを得意とする中尾美樹と1学年下の中村真衣に完敗。物陰で1人、悔し涙を流した。

 3週間ほど前に風邪をひいて体調を崩していた。自己管理の甘さが五輪への夢を断った。稲田は「風邪をひいたのも(第一人者の)重圧に負けたから。それがなくても、同じようなタイムしか出せなかったと思う」と振り返る。

 98年の世界選手権(豪州・パース)は7位。中村が2位だった。すっかり影が薄くなった稲田が、突然の復活をアピールしたのは昨年7月のユニバーシアード・パルマ大会。その1カ月前の日本選手権で中村が塗り替えた日本記録を0秒01上回る1分1秒06をマーク。実に4年ぶりの自己ベスト更新だった。

 「(低迷期は)気持ちのゆるみが体のたるみにまでつながっていた」。体重を4キロ絞り込み、現在の167センチ、58キロの筋肉質の体に改造したのが復調につながった。

 もともと稲田の泳ぎは「世界一洗練されている」(萩原智子を指導するドルフィン甲府・神田忠彦コーチ)と評価が高い。ソウル五輪男子100メートル背泳ぎの金メダリスト、鈴木大地を育てたセントラルの鈴木陽二コーチの指導を高校1年から受けている。世界を制したテクニックの粋が、稲田に受け継がれているのだ。

 特徴は「大地に通じるリズムのよさ」(具志統・日本水泳連盟外国委員)。テンポの上げ下げが自由にでき、ペースを作りやすい。お手本ともいえる鈴木大地・順大水泳部コーチも「腕と足のバランスがとれて無駄がない。特に腕をかく動きがよく、1ストロークで進む距離が長い」とほめる。100メートルで前半のスピードはライバル中村に及ばないが、彼女の身上である後半の伸びはこのストロークのうまさが支えている。

 今季の世界ランクは4位。だが、わずか1秒弱、およそ体一つの距離の中に8人がひしめき合い、大接戦が予想される。「前半をいかに楽に速く入れるかが稲田の課題。トップと体半分の差で折り返せれば、後半勝負をかけられる」と鈴木陽二コーチは読む。

 「五輪では最も速い選手が勝つとは限らない。頂点を目指し、最後の勝負強さを追求したい」と鈴木陽二コーチ。“大地譲り”の勝負強さも受け継げば、五輪を知り尽くしたコーチの思惑も現実に近づく。

[2000年8月3日/日本経済新聞 朝刊]

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