NIKKEI NET
シドニー五輪2000
最新ニュース
new競技別
new解説者の目
五輪ビジネス
豪SMH紙から
みどころ・コラム
from シドニー支局
競技日程
選手紹介
競技会場
フォトギャラリー
国別メダル数
みどころ・コラム
高橋尚子、「最速の女王」目標・女子マラソン物語(20)完
マラソンコースを試走する高橋尚子(シドニーのセンテニアル・パーク)
 黄色を基調とする積水化学のチームジャージーの色は、小出監督の発案で決まったという。イメージは金メダルである。

 ただ、同監督にとって金メダルといえばまず五輪。1997年アテネ世界選手権の女子マラソンで優勝した鈴木博美がかつて苦笑しながら話したことがある。「私のは本物じゃないと思われているらしい。監督にとって金メダルというのは五輪だけらしいんです」

 五輪の金メダルに並々ならぬ意欲を燃やす小出監督、高橋尚子がシドニーのマラソンコースを初めて訪れたのは5月16日。車で視察した後、現地で会見した高橋は「簡単なコースじゃないですね」。

 アップダウンが多くて走りにくいだけでなく、記憶しづらいコースだという。「大きな一本道ではないし、地形や道路の感じも覚えにくい。これから何回か走って全部をつなげて頭に入れたい」。翌日からの試走では、コース周辺の風景、道路のでこぼこなど細かい情報もインプット、レースの仕掛けどころをあぶり出した。

 準備万端整えたコンビが目指すのは、女子マラソンが初めて五輪に登場した84年ロサンゼルス五輪で優勝したジョーン・ベノイト(米国)のレース運びだ。自分の力を信じて最初からぐいぐい飛ばしていく。

 同監督は試走後、「最初の下りは全力でいって飛び出してはいけない。必ず後で足にくる。ベノイトのようにはいかないな」「スピードのある選手がいるから、前回アトランタ五輪のロバのように中盤から飛び出して逃げ切るのは難しい」などと話したが、本音は別にある。

 世界最高記録保持者のテグラ・ロルーペ(ケニア)と並ぶ優勝候補と目されるだけに、高橋は国内外を問わずライバルたちの徹底マークを受ける。「飛び出さないよ」と言い、集団待機をにおわせるのも、他陣営との腹のさぐり合い。早くも周到な神経戦が始まっている。

 高橋は「金メダルと同じぐらい世界最高記録に興味があります」と言い続けている。五輪は勝負優先といった固定観念を打ち破り、勝利と記録の両方を手に入れるのだ。

 小出監督は、シドニーの優勝タイムを2時間22―23分、プラスマイナス2分と予想する。ベノイトが打ち立てていまなお残る五輪女子マラソン最高記録2時間24分52秒が塗り替えられるのは必至。「五輪にのみ込まれるのでなく、逆に五輪を包み込むような自分でありたい」。五輪史上最速の女王へ、一直線に進む。=おわり

(この連載は串田孝義が担当しました)

[2000年6月30日/日本経済新聞 朝刊]

Copyright 2000 Nihon Keizai Shimbun, Inc., all rights reserved.