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デジタル五輪、協賛金は“ドンブリ採算”
 巨大化を続ける五輪ビジネス。世界の人々にブランドを売り込む絶好の機会と見た企業群が、巨額の協賛金と引き換えに数少ないスポンサー企業の地位を奪い合う。だが最近、企業に対し、こんな素朴な疑問が投げかけられるようになった。五輪は投資に見合う成果を上げているのか――。

  • 採算が見える仕組み

     企業の多くは「採算は十分に合っている」と表向き強調する。しかし、「実際のところはよく分からない」というのが本音だろう。国内で五輪関連のビジネスを事実上取り仕切ってきた電通でさえ、その例に漏れない。

     電通でスポーツ部門を統括する森田斐雄常務が、自ら「画期的」と称する制度が今年4月に始まった。その名は「プロジェクト管理制度」。

     五輪など巨大イベントの招致から準備、開催まで約10年にも及ぶヒト・モノ・カネの流れをすべて共通コードで管理する。「トータルで、はっきりと採算が見える仕組みを考えた」(森田常務)。電通は来年秋に株式上場を控えており、これまで「採算より受注」を優先してきたイベント事業に初めて本格的な管理システムを導入する。

     まず五輪やワールド杯サッカー、万博などの巨大イベントから運用を始める。例えば、来年7月に開催地が決まる2008年の夏季五輪。電通は、名乗りを挙げた大阪市の招致活動を支援しており、社員が「大阪五輪」の実現に向けて働いた時間や、かかった経費などのデータに専用のコード番号を付けてコンピューターで管理していく。

     これまでも年度ごとに事業収支はみてきた。98年の長野五輪も「当社の事業としては黒字決算」(森田常務)。しかし、招致活動から大会運営の企画、人材派遣、放映権交渉、スポンサー集め、広告制作など多岐に及ぶ代理店事業の、しかも仕込み段階から10年に及ぶ収支をすべて把握しきっていたわけではない。

  • 「高い授業料払った」

     事業内容の透明性は、スポンサー企業への説明責任を果たすうえでも重要だ。五輪のスポンサー料や放映権料は高騰の一途をたどっている。10社前後の最上位スポンサーが国際オリンピック委員会(IOC)に支払う協賛金の総額(2大会分)は、この10年あまりで五倍以上の5億5000万ドルに達した。ビジネスを仲介する代理店の責任は重い。電通としても、これまでのような“ドンブリ勘定”では通用しないと判断した。

     世界中で五輪マークを使った広告宣伝活動が展開できる最上位スポンサーの1社、松下電器産業の松井孝夫・オリンピック事業推進室長は告白する。「今でこそ言える。これまでに払った授業料は高かった」

     松下電器は電通の仲介で88年から五輪の最上位スポンサーを務めてきた。現地への放送機器の納入を通じて販路を拡大、国際イベントのノウハウも蓄積した。それでも「損をしないビジネスができるようになったのは、ようやく96年になってから」と話す。

  • 足元には課題山積

     その松下電器にしても、豪州の現地法人に「シドニー五輪効果」を尋ねたところ、やや意外な答えが返ってきた。パナソニック・オーストラリアの木谷勝社長は「年間を通した売上高はせいぜい前年並みではないか」と言うのだ。テレビやビデオなどの売り上げは、シドニー五輪開幕前の7-8月で前年同期比5割増の“特需”を見込む。半面、年明けから続いた買い控えや、豪ドル安からくる輸入製品の値上げなどで効果は相殺されると予測する。木谷社長の表情は厳しい。

     膨大なヒト、モノ、カネ、トキをつぎ込んで、なお不透明な五輪の成果。スポンサー企業は五輪のイメージに重ねて自らのブランド力を高めようと必死だが、足元を見れば、課題は山積している。(管野宏哉)

    [2000年6月29日/日経産業新聞]

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