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デジタル五輪、ネット放映権問題で混迷・収入源のTVと競合
五輪会場となる「スタジアム・オーストラリア」(シドニー郊外のホームブッシュベイ)
 豪州シドニー五輪が、あと2カ月あまりで開幕する。200の国と地域から1万人の選手が参加する今世紀最大のスポーツの祭典だ。もっとも主催者の国際オリンピック委員会(IOC)や地元組織委員会の表情は明るいばかりではない。招致活動や運営を巡る醜聞で五輪ブランドは傷つき、インターネットなどデジタル時代への対応も戸惑いが目立つ。揺れるデジタル五輪の光と影を探った。

  • TVは2008年まで契約

     IOCが揺れている。迷いの原因は「インターネット放映権」。テレビだけでなく、インターネットでも五輪競技の配信を認めるか否か。一見、小さなテーマに見えるが、扱い方次第ではIOCの権益が骨抜きになる「爆弾」だ。

     IOCにとって、テレビ放映権は最大の収入源。シドニー五輪では総事業予算26億米ドルのうち、51%を放映権収入が占める。IOCはいまだ開催地さえ決まっていない2008年夏の五輪まで、放映権をすべて売却済み。米国ではNBCが五大会合計で3800億円、日本ではNHKと民放が合わせて600億円を支払う。

     国ごとに特定テレビ局に独占的な放映権を与え、その見返りとして膨大な放映権料を手にする――。IOCはこんな枠組みを作り上げ、巨大五輪ビジネスを拡大してきた。しかし五輪競技がネットで放映されるようになれば、状況は一変する。

     視聴者の一部はテレビを離れパソコンに向かう。マイナーな競技がネットだけで放映されるようになれば、そうした競技のファンのテレビ離れは加速する。たとえ日本でネット放送が実現しなくとも、米国のネット放送局へのアクセスは可能。ネット放送は、IOCが巨大五輪の基本的枠組みとして築き上げてきた「国別放映」「テレビ局独占」という大前提を根底から覆す恐れがあるのだ。

     ネット放送の“危険性”に気付いたIOCは今年2月に重要な判断を下した。「シドニー五輪ではインターネットを使ったいかなる動画配信も認めない」。米NBCはシドニー五輪でテレビ放映と同時にネット放送を実施する計画だったが、この決定により断念に追い込まれた。テレビ局向けの国際映像を取り仕切るシドニー五輪放送機構のゲイリー・フェントン最高執行責任者(COO)は「インターネット放送を認めれば、五輪ビジネスの根幹が揺らぐ」と語る。

  • 新たな安定財源にも

     IOCはネットを「敵」と決め付けているわけではない。インターネット放送をテレビとは別枠の放映権として売却できれば新たな安定財源が生まれるからだ。しかしネットが爆発的に普及しているとはいえ、現時点ではテレビが主役。消費者のテレビ離れを後押しするような政策を、IOCが自ら仕掛けるのは難しい。

     ネット放送を巡る問題が最初に表面化したのは1998年。過去40年にわたって五輪スポンサーを務めてきた米IBMがシドニー大会を最後に撤退する方針を決めた。表向きの理由は、2大会分で50億―60億円に達する協賛金の負担を避けるためだが、真の原因はネット放送を巡るIOCとの対立にあると言われている。五輪の情報システムの元請けを兼ねるIBMが、自らインターネット放送を実施したいと持ち掛けけたが、IOCがこれを拒否。スポンサー降板に発展したというのだ。それから2年がたつが、IOCはいまだにネット放送に対して明確な立場を打ち出せないまま。2月の禁止令もシドニー五輪と2002年の米ソルトレークシティー冬季五輪に限定した内容で、実質的には判断の先送りだ。

  • 産業界交え会議予定

     IOCは11月、スイスの本部で「スポーツとニューメディアの未来」と題する会議を開く。産業界からも代表者を集め、インターネット放映権の問題などを議論するが、結論が出るには時間がかかりそうだ。ネットは進歩が速く、「4年先に市場がどうなっているか、放送と通信の融合はどこまで進むか、答えはだれにも分からない」(IOCのマイケル・ペイン・マーケティング部長)。

     デジタル時代の五輪放送権について聞かれたアントニオ・サマランチIOC会長はこう答えたことがある。「我々は道に迷ってしまった」(管野宏哉)

    [2000年6月27日/日経産業新聞]

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