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デジタル五輪、足元揺らぐ放送産業・消費者に利点提示(下)
放送体制を説明するSOBOのゲイリー・フェントンCOO
 「9月のシドニー大会で、五輪で初めて送信のデジタル化を実現する」。五輪競技の国際映像を編集・提供するシドニー五輪放送機構(SOBO)のゲイリー・フェントン最高執行責任者(COO)は語る。インターネットと並んで、五輪ビジネスのデジタル化を象徴するもう一つの流れが、デジタル放送の台頭だ。

  • 高品質の映像を送信

     これまで撮影用のカメラやVTRなど放送機材のデジタル化は進んでいたが、放送局に送る国際映像はアナログ波を使っていた。シドニー五輪では、信号圧縮していない高品質のデジタル映像をそのまま各国の放送局に送信する。

     実際は、延べ3400時間に及ぶ大会の映像をアナログ波とデジタル波の2本立てで送信し、各放送局が自前の設備に合わせた方式で受信する。技術的には元の映像が鮮明な分、一般のテレビでもよりきれいな映像が楽しめるという。

     日本ではシドニー五輪がBS(放送衛星)デジタル放送の実験場となる。「12月の本放送開始に向けて普及機運を盛り上げたい」とNHKの海老沢勝二会長は語る。

     NHKは近く高画質のデジタルハイビジョン映像に対応した中継車四台など機材一式を現地に送る。五輪放送の具体的な中身が決まるのは7月中旬だが、リモコン操作でテレビ画面に競技結果を映したり、番組の予定表が呼び出せるデータ放送も目玉の一つに盛り込む見通し。

     1964年の東京五輪はカラーテレビの普及、88年のソウル五輪はBS放送の普及にそれぞれ一役買った。シドニー五輪は「1000日で1000万世帯の普及」が目標のBSデジタル放送にとって重要な一歩となる。

  • 放送機材の「展示場」

     放送のデジタル化は機器メーカーにとっても商機だ。シドニー五輪の公式スポンサーで、放送システムの元請けも兼ねる松下電器産業は大会向けにデジタルVTR1000台、デジタルカメラ300台、モニターテレビ4000台などを納入する。

     放送システム部門を率いる山本克彦理事は「五輪はデジタル放送技術を世界にアピールするひのき舞台」と話す。今回持ち込む業務用デジタルVTRのテープは家庭用のビデオカメラと同じ4分の1インチ幅。この極小テープに高画質のデジタル映像を収録する。

     各国の放送関係者が実際に使って品質を評価すれば、その後の商談につながる。放送用システムの受注を巡って世界で激しい競争を演じるソニーに「一歩先んじるための重要な展示会」(山本氏)となる。

  • 広告のカンフル剤に

     デジタル放送の登場で躍起立つのは広告業界も同じ。デジタル放送とインターネットが融合すれば、画面を見ながらリモコン操作で通信販売ができ、テレビCMに出ているタレントがリモコン操作に反応して動き出す双方向CMも実現する。電通の森田斐雄常務も「成熟した広告市場のカンフル剤」と注目する。

     90年代に放送機器のデジタル化は急速に進んだ。しかし消費者にはこれといった利点が見えなかったのも事実。その意味で、今回のシドニー五輪は消費者が「デジタル放送」を実体験できる初めての機会となる。インターネットなど新たなメディアの台頭で足元が揺らぐテレビ、放送産業の生き残りのカギもデジタル技術が握っている。(この企画は大石信行と管野宏哉が担当した)

    [2000年6月23日/日本経済新聞 朝刊]

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