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デジタル五輪、複雑化する放映権・ネットがTVに迫る(上)
会場のコンピューターを使い、競技後チャットを楽しむ水泳ファン(5月、競泳の全豪代表選考会)
 デジタル技術がスポーツの祭典を変えようとしている。オーストラリアのシドニー五輪では競技経過が逐一インターネットで世界に流れる。14億人対35億人――。五輪のネット視聴者はテレビ視聴者に迫る見通し。デジタル化による放送と通信の融合がテレビ放映権料に依存した商業五輪の枠組みに変更を迫る。今世紀最後の五輪は「デジタル五輪」の幕開けでもある。

  • 膨らむ五輪サイト

     6月30日、シドニー五輪の公式サイトに目玉が加わる。簡単なパソコン操作で上下左右、360度の立体画像が楽しめる仮想体験コーナーだ。9月15日の開会式では世界200カ国、約1万人の選手と同じ目線でスタジアムの興奮が味わえる。ソフトを開発した豪ハイロ・ドット・コムは期間中に数千枚の三次元デジタル画像を発信する。

     「ネットの役割は長野大会の比ではない」と国際オリンピック委員会(IOC)のマイケル・ペイン・マーケティング部長は語る。推計ではIBMが管理する五輪公式サイトは約3万5000ページ、延べ視聴者は14億人を超える。1996年アトランタ大会の7倍、98年長野の2倍以上だ。

     競技結果だけでなく、詳細な途中経過が売り物だ。豪IBMは陸上、サッカーなど28競技でほぼリアルタイムで競技データを配信する。

     放送と通信の融合を象徴するサービスも登場する。パソコン上の3つの映像がそれぞれ別の競技を映す。画面の空きスペースで電子メールを書きながら、横目で競技観戦。選手と同じ靴が欲しくなったら、画面をクリックするだけで通販サイトにつながる。

     豪企業アクセスワンが事業化。豪国内だけで販売する専用の受信装置に接続したパソコンに通信衛星経由で動画を送信、電子商取引はネットを利用する。

  • ネット規制で明暗

     実は、五輪にはインターネット規制がある。今年2月IOCは「ネットでは五輪競技の動画中継は認めない」方針を決めた。アクセスワンは「動画送信は通信衛星経由で、ネットとは無関係」(デビッド・スペンス会長)としてネット規制の網から逃れた。対照的に米テレビ大手のNBCは昨夏決めたネット放送計画の断念に追い込まれた。

     IOC自身、テレビとネットのはざまで揺れる。安定財源確保の目的で96-97年に結んだ各国テレビ局との放映契約。米NBCは2008年大会を含め3800億円、NHKなど日本の放送局も600億円を支払う。スポンサー収入、入場料収入をしのぐ最大の収入源で、IOCはテレビ局の権益を守る必要がある。

     一方、ネット隆盛を見通せなかったツケは大きい。IBMはシドニー五輪を最後に主力スポンサーから撤退する。ネットでの動画配信の権利を巡るIOCとの意見対立が引き金だ。

     五輪の期間中、会場内でのビデオ撮影は原則自由の見通し。選手や観客が個人のホームページ上で公開する映像をどこまで規制できるかは予断を許さない。

  • IOC、対応を模索

     シドニー五輪直後のパラリンピックでは本大会に先駆けてネット放送が実現する。主催者も規模も違う五輪と単純に比較できないが、国際大会でネット放送が始まる意味は大きい。

     IOCのディック・パウンド副会長は「シドニー五輪はスポーツ中継の転換点。デジタル時代の放映権のあり方を早急に見直す必要がある」と力説する。

     IOCは11月に改めてネットへの対応を協議する。ネットなど新メディアを商業五輪にどう取り込むか。協議は21世紀の五輪を占う試金石となる。

    [2000年6月22日/日本経済新聞 朝刊]

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