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「2時間20分」破るのは?・女子マラソン物語(9)
女子の世界最高をマークしたケニアのロルーペ(昨年9月のベルリンマラソン)〔著作権:AP.2000〕
 女子マラソンの記録は1998年までに男子に追い付く――。科学誌「ネーチャー」が92年にびっくりするリポートを掲載した。当時、女子マラソンの記録が男子の4倍のペースで伸びていたのに着目した予測だった。

 2000年を迎えたが、予想はあっけなく外れている。マラソン世界最高記録は男子が2時間5分42秒(ハリド・ハヌーシ=米国)、女子は2時間20分43秒(テグラ・ロルーペ=ケニア)である。

 一般に女性は体脂肪が多く、持久力があるのでマラソンに適しているのだが、だからといって男子の記録を上回ることにはならない。男子と女子には歴然とした筋力の差がある。

 女性が体脂肪を総動員して戦い、男性に対する優位性を発揮できるのは、酷寒酷暑といった極限状況といわれる。距離も42.195キロでは短すぎる。「100,200キロ、いやもっと長い距離のレースなら女性が男性を上回るかもしれない」(小林寛道・日本陸連医科学委員長)。長距離でなく“超”距離レースだ。

 では、女子マラソンの記録はどこまで伸びると予想できるのだろうか。

 実は、女子の潜在能力を最も実感させたのは98年12月のバンコク・アジア大会である。高橋尚子(積水化学)が樹立した日本最高2時間21分47秒は、女子だけでペースメーカーなし、さらに気温は30度超と悪条件だらけだった。

 3位の甲斐智子(京セラ)は自己記録より7分以上遅かった。高橋以外の完走9選手は全員が自己ベストを下回り、低下率は平均すると6.4パーセント。この数字を高橋にそのまま当てはめてみると、彼女のベストは2時間13分台になる。もちろん机上の計算にすぎないが、条件次第で2時間20分を切る力はあったとみていいだろう。それが高橋の潜在力である。

 ロルーペの世界最高は99年9月、ベルリンマラソンで記録された。契約したスポーツ用品メーカーの男子選手4人がゴール前まで伴走、途中では飲料を手渡ししてもらうなどの補助付きだった。

 国際陸連などはペースメーカーの行動を制限する検討を進めているが、勝負よりタイムレースの色合いを強める海外マラソンの流れは変わらない。

 シドニー五輪後、これまで海外マラソンに消極的だった高橋ら日本のトップ選手が、記録更新を狙って参戦する。日本女子初のマラソン世界最高樹立の瞬間が訪れるかもしれない。

[2000年6月17日/日本経済新聞 朝刊]

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