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コダック、2008年まで契約更新・スポンサーの戦略様々
シドニー五輪組織委員会の本部入り口に展示されている公式スポンサーのロゴ
 フィルム大手の米イーストマン・コダックはオリンピックを、「デジタル・イメージング企業に脱皮する姿を世界に示す最高の機会」と位置付けている。シドニー五輪には1000人以上のカメラマンを含む約1万5000人の報道関係者も集まる。主力の銀塩フィルムをはじめとする製品を売り込み、同時にデジタル画像処理など成長分野で先端を走る企業としてのイメージをアピールするのに、これ以上の舞台はない。

 五輪会場では「世界最大の写真現像所」を開設。選手のケガを診断するレントゲン装置も提供する。写真事業や医療機器部門の販売促進に直結すると見込む。選手や大会運営のボランティア、スポンサーなど20万人余りの写真入り証明書も、デジタル画像処理技術を駆使して作成する。五輪を「ショーケースとしてフル活用する」作戦だ。

 1896年に近代オリンピックが始まって以来、コダックはスポンサーとして五輪にかかわってきた。だが、1984年のロサンゼルス五輪は「1業種1社」に絞ったスポンサー制度を展開。日本の富士写真フイルムが写真・フィルム部門のスポンサーとなった。コダックは自国・米国での開催だったにもかかわらず販促活動を展開できず、富士フイルムの攻勢を許した。

 「この失態がシェアの下落基調を生み、90年代の日米フィルム摩擦の遠因になった」とみる関係者もいる。

 ロス五輪以降IOCが商業路線を展開する中で、最上位スポンサー「TOP」として五輪に返り咲いたコダックは、98年の長野では“敵地”で積極販促を進めた。「日本で4%超のシェアを確保できたのもスポンサー効果のおかげだ」と分析する。そして今春、TOP契約を2008年まで延長した。

 全世界で五輪スポンサーとして宣伝活動する権利を持つTOPは、負担する費用も4年間で4000万―6000万ドルと巨額となる。

 五輪招致に関するスキャンダルが発覚した時は当然、彼らから反発の動きが出た。まっさきにスポンサー辞退を示唆したのは、TOPの米生命保険ジョン・ハンコック。経営陣から厳しいIOC批判が飛び出した。

 ところが同社は今年2月、2004年までの契約更新に応じた。「大会中のテレビ視聴者が35億人に達する」(米広告関係者)宣伝効果を選んだ形だ。

 米ビザ・インターナショナルは、スキャンダルにもかかわらず早々と契約更新を決めた。豪州のクレジットカード1600万枚のうち900万枚は「ビザ」ブランド。その利用額は豪州消費支出の15%近くに達しているが、一層の拡大を目指す。

 現在、米のマーケティング関係者らは「スキャンダル問題は沈静化し、企業は販促効果の再評価を始めた」と分析している。だが、IOCとスポンサー企業の思惑のズレは、スキャンダル以外の部分で表面化しつつある。

 米IBMはシドニー五輪組織委員会と共同で、インターネット上に公式サイト(http://www.olympics.com/)を設けた。同サイトは大会中に14億人のアクセスが予想される。

 IBMの担当者は「長野五輪当時に比べ、飛躍的な技術革新があった」と胸を張る。3D画像でシドニー市内の仮想観光が楽しめる仕組みなど、随所に工夫を凝らしている。にもかかわらず、IBMはシドニーを最後にIOCとのTOP契約を打ち切る。

 シドニー五輪のサイトでは競技結果や写真はほぼリアルタイムで掲示されるが、競技映像(動画)は放映権を握るテレビとの関係から、ネット上では流せない。ネット時代の強力なコンテンツとして五輪をとらえるIBMは、次回五輪からはネットでの動画提供も狙っていた。これに対しIOCは、収入の柱であるテレビ放映権を守らなければならない。両者の思惑の違いが、IBMの撤退につながったという。

 五輪の宣伝効果は絶大。スキャンダルにもかかわらずスポンサー企業の大半は五輪を販促に使うことに前向きだ。だが、産業界を取り巻く環境の急速な変化は、IOCにも新たな対応を迫っている。(ニューヨーク=山室純)

[2000年6月7日/日本経済新聞]

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