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坂に挑むマラソン3人娘・仮想実況中継
 日本期待の女子マラソンは9月24日午前9時(日本時間午前7時)にスタートする。過去2大会では有森裕子が銀、銅メダルを獲得。今回は高橋尚子(積水化学)、山口衛里(天満屋)、市橋有里(住友VISA)のトリオが金メダル獲得に挑む。総合力では世界最強と評価される日本の女子マラソン。レース展開を、試走した日本選手らの証言をもとに大胆に予想してみた。

  (9月24日午前9時、気温14度、湿度50%)

 女子マラソンがシドニー湾北側のセント・レオナルド公園横をスタートした。絶好調が伝えられる日本の3選手。それぞれ現地での試走も済ませ、難コースへの対策も十分だ。

・序盤は慎重に

 すぐにシドニー湾にかかるハーバーブリッジに向かう下りが始まる。約2キロで50メートル以上下る急坂。数人がここを利用して飛び出した。しかし、日本の3人は慌てない。ロルーペ(ケニア)、シモン(ルーマニア)、ロバ(エチオピア)ら有力選手も待機策。一団となって慎重にレース序盤の難所を通過する。

 「最初の坂をうまく下らないと、必ず後で足にくる。集団の中で転ぶのもこわい。6キロまでの20分は特に慎重に走らないと」(高橋を指導する小出義雄・積水化学監督)

 ハーバーブリッジを渡ってシドニー市中心部に入ると5キロ。有力選手集団の通過タイムは16分40秒。スタート後の下りを考えるとそれほど速くはない。ここからが本当のスタートだ。セントメリー大聖堂、ハイドパーク、センテニアルパークと観光名所の続く平たんなコース。先行していた選手たちはすぐに吸収され、脱落していった。

 「コースではセンテニアルパークが一番好き。本当にきれいで、こんなコースならいつまでも走っていられる」(高橋)

 10キロまでの5キロは16分30秒にペースアップ。高橋、ロルーペが前に出て集団を引っ張って、さらにペースは上がった。先頭集団はたちまち、日本の3選手にロルーペ、シモン、ロバ、チェプチュンバ(ケニア)の7人に絞られた。スピード不足が心配される市橋にはきついペースだが、懸命に集団についている。

 「(銀メダルだった)昨年の世界陸上では5キロ16分20秒まで対応できるスピードをつけていた。もっと力をつけて本番に臨む。彼女の持ち味はどんなレースへも対応できる力だ」(市橋を指導する日本陸連の浜田安則コーチ)

 公園を出て南下して折り返し、再び市街地に戻る25キロ前までほぼ平たんが続く。各5キロのラップはなんと16分20秒を上回った。引っ張るのは高橋。98年バンコクアジア大会では30度を超える暑さの中で直射日光を浴びながらスタートから飛ばした。ここでは沿道の樹木がコースに優しい木陰を作ってくれる。ついてこれるのは、さすがに世界記録を持つロルーペと昨年の東京国際でスピードを見せつけた山口だけだ。

 「(高橋は途中で飛び出すスピードがあるが)今回はスピードのあるロルーペや山口がいるからな。アトランタ五輪のロバのような20キロ前からの独走は無理。ロバといえばこのコースの後半は彼女に向いてる」(小出監督)

・精神力の戦い

 コースの様相は25キロから一変する。厳しい耐久レースの始まりだ。シドニーの中心シティーから一気に西に下り、自動車専用道路に入って上り下りを繰り返しながら壁のように立ちはだかるアンザックブリッジへ。ここからゴールまで、急坂はないがアップダウンが連続する。

 「まるでジェットコースターみたい。相当に脚力と筋力をつけることが必要みたい」(山口)

 「米国・ボルダーではもっとすごい絶壁のような坂を走ってます。しっかり練習して、なんだこんな坂と思って走ります」(高橋)

 30キロまでの5キロのラップは17分を超えた。高橋が疲れの見え始めたロルーペと山口を引き離し始めた。緑豊かな住宅街。長い上りと下りが交互に続く。35キロ手前の1キロ近い上りを高橋が懸命に駆け上がる。30メートル遅れてロルーペと山口。一時は遅れた後続もロバを先頭にシモン、市橋が追い上げる気配。長い上りが終わったと思ったら、36キロ過ぎからまただらだら坂。

 「急なアップダウンではないですが、精神的にはすごくきつい部分がありますよ」(市橋)

・優勝の行方は

 五輪公園に向かう自動車専用道路に入った。ゴールまであと4キロ。トップの高橋とロルーペ、山口との差は20メートル、その30メートル後ろにロバ、シモン、市橋も迫ってきた。ゴールまで後2キロ。スタジアム・オーストラリアはすぐそこだ。逃げ切れるか高橋。山口は、市橋は。日本のメダル獲得は間違いのないところ。悲願の金メダルまであと一歩だ。

[2000年6月7日/日本経済新聞]

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